Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

(リハビリ記事)フライボール革命でHRはみんなのものになった

 

(目的)

 本塁打数がここ数年急増している。それはフライボール革命と呼ばれ、ある種の意識改革によるものだと思われる。それについては以前考察したとおり。今回はこの手の記事を新しく書くためのリハビリとして、追認と追加の考察を行うことを主目的としている。

 また、フライボール革命がこれまでと何が違うのかを考察したいと考えている。

 

(方法)

 MLBトータルのシーズン本塁打数、シーズン本塁打が50本以上、40本以上、30本以上、20本以上の打者の人数を調べ、年度ごとの変化を確認する。併せて両リーグの各年の本塁打王本塁打数を確認し、年度ごとの変化を確認する。

 今回は過去30年分について確認を行った。

 

(結果)

 

f:id:wishtofisharay:20191030162814p:plain


□01:右からAL本塁打王の本数、NL本塁打王の本数、50本以上の人数、40本以上の人数、30本以上の人数、20本以上の人数

 

 これを基に考察した。

 

(考察)

 

f:id:wishtofisharay:20191030162818p:plain


□02:MLB本塁打

 MLB全体の本塁打数は90年代後半から00年代前半にかけてステロイド時代の本塁打量産期があり、その後10年代前半にかけて「ポストステロイド時代」「投手の時代」などと言われ本塁打数は減少した。その後シーズン最多本塁打記録を更新した17年、19年に向けて増加することがわかる。

 

f:id:wishtofisharay:20191030162821p:plain


□03:AL/NL本塁打王

 ところが、シーズンの本塁打王の本数自体は90年代から変動はほとんどない。基本的には30本台後半から50本台である。特にALは30本台が2度、60本以上は無しと安定している。NLはMcGwire、Sosa、Bondsらの影響で極めて多い本数で推移していることもあれば、本数が少なくなる時期も見られる。また、97年はMcGwireがOAKからSTLへ移籍したことで本塁打王を獲得することはできなかったが(OAKで34本、STLで24本)、シーズン通算では58本とMLB最多の本塁打を打った。

 

 

f:id:wishtofisharay:20191030162826p:plain


□04:40本以上/50本以上打者数

 特にホームランを打つことに長けている長打力が持ち味の40本塁打以上/50本塁打以上の打者の人数を調べてみると90年代後半~00年代前半のステロイド時代と比較すると現在はそこまで人数が多いわけではない。50本以上の打者数は17年でも2名しかおらず、40本以上の打者数も19年に10名記録したが、96年~06年は毎年10名以上、96年は最多の17名であったことを考えると特筆すべき数字ではないように感じる。

 

 これらのことから、トップ層が多くの本塁打を打つのではなく、それ以下の中間層の人数が増えたのではないかと考えられる。

 

 

f:id:wishtofisharay:20191030162829p:plain


□05:20本以上/30本以上打者数

 そのため20本以上まで広げてみると、40本以上とは違う傾向が見て取れる。20本以上の打者数は今年129名を記録するなど、16年から4年連続で100名以上いた。ステロイド時代では99年と00年に2度記録しただけであったため、ここについては明確に現代の方が人数が多くいるのが明確にわかる。つまりトップ層が大きく数字を伸ばして総本塁打数を押し上げたのではなく、その下の層が現代の本塁打増加の主因であると理解できる。

 30本以上の打者数はステロイド時代と大きな人数差がないともみえるが、40本以上がむしろ少ないくらいであったことを考えるとトップ層の下の30本台の人数が多いと考えられる。

 

 

f:id:wishtofisharay:20191030162833p:plain


□06:20本台/30本台人数

 それらを抽出すると一目瞭然である。特に20本台の人数の伸びがすさまじく、16年以降、4年連続で70名以上がこれを記録しており、圧倒的である。

 

 以上のことから、現代とステロイド時代の本塁打量産の性質の違いが見えてきた。ステロイド時代はトップ層が強く牽引した結果の本塁打の量産であり、現代はむしろその下の長距離打者以外の打者の本塁打量産の結果であると考えられる。その人数が大きく違っているため、個々人の本塁打数はステロイド時代のNLの方が多くとも、総本塁打数では現代の方が多いのではないか。

 

(まとめ)

 ステロイド時代は本塁打が量産されたとは言え、本塁打はやはりごく限られた、一部の選ばれた打者たちのためのものであった。ごく限られた打者が本塁打狙いのフライを打つ打撃を行い、そうではない打者はむしろ本塁打になりにくい打球、ライナーやゴロを狙って打っていたのである。ところが、現代ではそういった打者の大部分においてもフライを意識して打つことによって成績の向上と得点への寄与が大きくなることが認められたため、フライを打つ打者が増加し、本塁打が量産されることになったと。その結果としての20本台30本台の人数の増加である。

 以前seriseriが確認した通りの事実が再確認できたのではなかろうか。

 また、OPSの評価や得点への寄与等、いわゆるSABRメトリクスによる得点増加への効果的な方法や、そもそも得点の価値の再認識などが現在の潮流を推し進めたことだといえる。

 

・現代は中距離打者の本塁打数が増加したことによる本塁打の量産である。

ステロイド時代とは異なった構造で本塁打が増加している。

・その裏にはSABRメトリクスによる分析の発展があるといえる。

本塁打が「選ばれた打者」から「みんなのもの」へと変化した。

・「みんな」がスイングを変えて意識が変わったことで本塁打が量産されている。

・以前確認した事実と相違ないことが確認できた。

 

(感想)

 大体知っている内容でしたが、別な手法で追認できたことは良いことでした。今回はどちらかというと歴史学的な考察方法でしょうかね。数字遊び面白い!

 結果的に本塁打はみんなに効果があるじゃんってわかって、スイングを変えるというある種の意識改革的なことでというのは面白いし、こうやって環境が変わっていくんですよね。わざわざ運営が環境を変えなくても。

 ついでにボールが変わってるの議論についてですが、よくわからないです。触ってる訳じゃないし。でもMLBだったら、ボールの仕様が変わっていればそれをアナウンスするとは思うんです。こっそり変えるなどということはフェアじゃないですし、MLBの行動っぽくないんですよね。ということは、仕様の範疇での変化なのではないでしょうか。NPBだって統一したボールの仕様に変えましたというのはアナウンスしてあったわけですし(その後その基準に合致しないボールだったのをそのまま黙って使ってた方が問題で…)。

 MLBももし変わってたとしたらなんかちょっとしたことによる製造ミス(というかブレ?)とかなんじゃないかなぁちがうかなぁ。

 というところで今日はここまで。

 

(おまけ)

 Seriseriが好きなゲーム、ポケモンでも、運営がいじらなくても環境は変わる訳ですよ。ある程度ゲームバランスがとれていれば流行り廃りが出てくるはずで、それこそメガライボルトが流行って廃れたり、ダブルでサワムラーが一瞬だけ流行ってすぐ対策されたり、ミミッキュ倒すためにメガギャラドスが型破りでアイアンヘッドしたと思ったらミミッキュは今度は素早さを落として耐久を厚くしてそれを耐えて返り討ちにできるようにしたり。

だから最近の運営が勝手に環境を変えてゆく(特にオンラインの)ゲームの手法は好きになれません。そんなことしなくても環境は煮詰まるし、変動すると思うんです。もちろんメガガルやアローの様なちょっと行きすぎってのはあるかもしれませんが、それだってじゃあメガガルさえ使えれば問題なかったかというとそうではなかった訳で。だからうん。運営は極力ゲームバランスに介入しないで、最初からバランスよく作るようにしてほしいです。と最近の運営がいじりすぎているゲームに対して強く思います。

 少しは将棋やチェスや囲碁を見習ってほしい(笑)あいつら何百年も同じルールのまま、色んな戦法が生まれては消え、流行って廃れていくんですよ?すごくない?ゲームバランスが悪いからって運営が手を加えるのはその芽を摘み取ることにもなるんですよ。飛車が強いから成るの禁止ね!とかなったら意味がわからん(笑)

 

(おまけ その2)

 90年以上、ALは通算73,497本塁打、NLは71,933本塁打。DHがあるALの方が本塁打は多くて当然だと思うが、そこまで差は開いていない。2%程度。ちょっと意外。10%くらい多くてもいいと思うんだよね。単純には言えないけど投手が打者になるんだから。

 ところがそれどころか98-11年の14年間のうち09年を除く13年間はシーズン本塁打数がNLの方が多い。特に01年は446本、07年は453本で2割増しくらいの計算。さりげなくすごいことだと思う。