Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

【連載 第0回】打者の運と実力を探る イントロダクション

 今日から連載形式で打者の運についての考察を行っていきたいと思います。今回は簡単に終わると思いきや、データをいじればいじるほどたくさんのデータが出てきてしまって書きたいことが増えてしまった結果、とてもとても1度の記事では収まり切らないことが確定しました。ブログ形式ではどうしても煩雑になりがちなので、本稿をイントロダクションとしてしばらくトップページに表示されるように致します。目次の各項目にリンクを貼るのでそこから閲覧を可能にします。よろしくお願いします。

 私も出席する4月12日の東京野球ブックフェア内の企画「野球ブロガーミーティング(詳細:http://baseballstats2011.jp/archives/43519693.html)」までの目安で連載していきたいと考えていますが、何せ大変重たい企画になりそうなので、ここまででできるかどうかも定かではありません(3/6現在でデータの処理はそろそろ終盤に向かいつつありますが)。

 また、今回はとても数字を多く使用することになるかと思います。なるべく読者の皆様にもわかりやすく説明をしていきたいと考えていますので、どうぞお付き合いください。わからない点、間違っている点についてはどしどしコメントでご指摘ください。

 目次:

 プロローグ 打者の運と実力を探る イントロダクション(本稿)

 第一章 運とは何か ~BABIPと正規分布

     第一回 第一章 第1項~第4項

     第二回 第一章 第5項~第7項

余談その1 幸運偏差値についての一考察

     第三回 余談その一 第1項~第3項

     第四回 余談その一 第4項~第8項

     第五回 余談その一 第9項~第13項

 第二章 打者の運は維持できるのか

     第六回 第二章 第1項~第5項

 第三章 運を左右する要素は何か

     第七回 第三章 第1項~第2項

     第八回 第三章 第3項~第5項

     第九回 第三章 第6項~第8項

     第十回 第三章 第9項~第12項

     第十一回 第三章 第13項~第15項

     第十二回 第三章 第16項~第17項

     第十三回 第三章 第18項

 余談その2 投高打低についての一考察(仮)

     第十四回 余談その二 第1項~第3項

 まとめ 

     第十五回 第四章 第1項~第2項

     第十六回 第四章 第3項~第5項

 余談その3 ステロイド問題についての一考察(仮)

     第十七回 余談その三 第1項~第3項

 イントロダクション:

 私自身のテーマとして野球選手に大きく関わってくる運と実力について興味は尽きることがありません。これまでもたびたびブログ記事に記載をしてきました通りです。元々、マイケル・ルイスの著書「マネー・ボール」を読んだことがきっかけで、野球の本質を数字で探ってみることに興味を持ちました。それまでも野球ファンではあり、数字を追いかけるのも大好きでしたが、いわば「有機的」な見方をしていました。その中で、マネーボールは野球の本質として得点を獲ること、得点をやらないこと、をより合理的に(あるいは「無機的に」)考え、実行してきたOakland Athleticsについて取り上げており、私に非常に大きな衝撃を与えました。

 野球の編成担当は特に将来、野球選手たちがどのような成績を残し、どのようにチームの勝利に貢献するかを見極めた上で、チームの編成をする必要があります。そのため、その選手がどのような能力を持っていて、今後どのような成績を残すかを見極める必要があります。その中で発展してきたのがSABRメトリクスです。これは野球選手の真の実力を見極め、将来の成績を予測するのが本当の目的になります。SABRメトリクスの発展にはいくつかの要素がありました。多く語られるのが、より得点との関わりの深い指標を新たに作り出すことにより、その選手の隠れた本当の実力にスポットライトが当てられ、選手に対する球団からの価値観(評価)が変化したこと、またファンタジーベースボールの発展により、一般の人も野球選手の将来的な成績の予想に興味を持ったこと、などが挙げられるところではあります。その裏にはコンピュータ等の処理能力の向上により、より大きな計算・データ処理を効率よく行えるようになったことがあります。

 このSABRメトリクスでは一つ野球界に投げかける大きな発見がありました。それが「運」の発見でした。つまり投手の勝敗や、打球が打った/打たれたあと、それがヒットになるかどうかは投げた投手本人や打った打者には(基本的に)関与が出来ない、というようなものが代表例です。私はこの「運」について非常に強く惹かれ、現在に至るまで、その「運」について調べ、記事にしてきました。今回の連載については元々は自分がファンタジーベースボールでチームを編成するにあたって、そもそもその「運」がどのような振る舞いを行うのかを確認したくて始めたものですが、データの処理を行えば行う程、そもそも「運」とはなんなのか、と言うような問題が多く発生してしまったため、この記事の連載を行うことになりました。基本的にはこれまでの「運」についてのまとめ、あるいは追試と言う形になりながらも、何らかの新しいことを言えればと考えております。

 それではこの連載「打者の運と実力を探る」をお楽しみください。

【この連載でよく使う指標/単語】(適宜更新します)

・BABIP(Batting Average on Ball In Play):フィールド内に打球が飛んだ時の打率を表すもので日本語ではインプレー打率などと呼ばれます。本連載の主人公的指標となります。リーグ全体で見るとほぼ3割に収束していくことが知られています。フィールド内に打球が飛んで以降は打者も投手も基本的には関与できないため、運に左右される指標であるとされています。だがしかし…と言うのがこの連載の目的の一つだったりします。

・xBABIP(eXpected BABIP):本来残すべきだった、「実力ととらえられる」BABIP。様々な求め方があるが、本連載及び弊ブログでは一貫して打球傾向から考えられる本来残すべきであったBABIPとしています。また、ベースは07年の打球傾向から見えるBABIPを基準としています。また、xBABIPとBABIPの差を「運」として扱っています。式は以下のとおり。

xBABIP=0.73LD%+0.24GB%+0.15*FB%

・運(うん):現時点で解析不能な何らかの要素によるものも含めた、無差別に動いてるように見える数字の変動のことをまとめて「運」と定義します。対義語は「実力/本当の能力」などを使います。

・Luck(らっく):幸運/不運を調べる、弊ブログ独自の指標。基本的には運要素の指標と実力の指標の差を表している。正の数字は幸運を、負の数字は不運であったとしている。本連載では一貫してBABIP-xBABIPを使用するが、投手の場合は逆になる。また、kLOB%とLOB%の差、xFIPとERAの差などを使用することもある。これの変動を調べることが本連載の最大の目的だったりもする。インディアナポリス・コルツのQBは特に関係は無い。

・幸運偏差値(こううんへんさち):02-13年の間、11年間で出てきたLuckを偏差値化したもの。相対的なものであるため、他に対応させることは困難で、本連載でのみ使用するものである。一般的な偏差値と同様に平均が50、分散1つにつき偏差値が10上下動する。また、算出方法にも若干の問題はあるが、この間の相対的な立ち位置を知ることが可能。歴代最高のラッキーボーイは07年のB.J.Uptonで幸運偏差値84.21、最低は13年のDarwin Barneyで幸運偏差値19.91。作成者はついうっかり恋愛偏差値と言ってしまうことが多々あるが、本人は幸運偏差値も恋愛偏差値も低目な模様。

※なお、データはいつものようにFangraphsから引用しております。