Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

首位打者を取るためには… ~運と実力~

 え~と…TBについては…もうあまり書きたいことが非常に少ないです。2014年はBalfour、Bell、Hanigan、LoneyとTBにしては大型補強、さらに新人王のMyersなど戦力は充実しているはずでした。しかし蓋を開けてみればBalfourとBellが期待を大きく裏切り、またチームは全く打てない状況が続いたためにジリ貧で借金がかさみ、シーズン終了です。Priceを放出し、今オフはTBは大きな岐路に立たされることになるでしょう。Zobさんを放出の上で、再建に舵を切るのだと思いますが、フリードマンやマドンの親父殿はそれが短期間(1-2年)と考えているのではないでしょうか。OdorizziやColomeには先発としての目途が立ってきましたし、FranklinやSmylyをPriceのトレードで獲得したことがそれを物語っています。とはいえ、打線の方は非常に深刻なパワー不足に苛まれています。ここを安価に、効果的に補強しない限り、近い将来の復活は無いと思います。

 あ、あと、去年BOSが運だけだって批判して炎上しましたが、今年は昨年同様のメンツで序盤からペナントレース最後尾を指定席にして、ずーっと来てましたね。そらみたことか、という感じです。

 さて、そんな訳で今日のテーマは首位打者についてです。とりあえず以下の表をご覧ください。

 過去10年間のMLB首位打者たちです。もちろん彼らはとても素晴らしい成績を残した選手達ですし、彼らの実力は疑う余地はありません。それぞれ打者のタイプは違えど、その年MLBで最も良い打率を残した選手であることは疑いようがないからです。

 一方、本ブログを読んでいる皆さんはご存じのとおり、打率と言うのは非常に運要素が絡む指標であり、1シーズンせいぜい500-700打席程度のサンプル数では誤差が大きすぎるものです。それを表した指標にBABIPがありますね。フィールドにとんだ打球の打率と表せば端的でわかりやすいかと思います。これは基本的にはどの打者もほぼ一定で、打者の運不運で上下する物と説明されることが多いと思います。しかしながら毎年高い打者や低い打者がいることも知られています。なので、LD%、GB%、FB%など打球の性質ごとに標準的な打率を求めて、その割合毎に、その打者が持つ(というよりも残した)固有のBABIP=xBABIPとの比較をすべきと考えています。

 また、いくらその打者が質の高い打球を揃えたとしても、それでも運不運に因る誤差は最大で±8%=8分以上にもなりますから、打球の質の良さ+幸運をつかまないと、リーグにたった一人しかいない首位打者の座は確保できないということになります。

 それではこれらの打者が実際にどれくらい幸運だったかを確認してみたいと思います。

 数字は例によってFanGraphsが公開しているデータを用いております。図中、xBABIPはLD%0.73+GB%0.24+FB%*0.15、LuckはBABIP-xBABIPです。大きいほど運の良さを示しています。

 それでは各年度の打者を見ていきましょう。黄色く着色してあるのが首位打者です。

□04AL

□04NL

□05AL

□05NL

□06AL

□06NL

□07AL

□07NL

□08AL

□08NL

□09AL

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□10AL

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□11AL

□11NL

□12AL

□12NL

□13AL

□13NL

 さて、長い表でしたね。スミマセン。さて、この表はLuck順になっており、黄色く着色された首位打者の選手がかなり上位に来ていることが一目瞭然です。つまり、首位打者を取るにはやっぱり運の要素が絡んでくることが重要であるということの証左です。

 ただし、この「運」という言葉には注意が必要です。その典型例が04年ALによく表れています。と言うのもイチローが262安打を打って首位打者を獲得した訳ですが、彼は大幅な上下こそすれ、基本的には大幅にプラスの数字をよくたたき出す選手の一人だからです。これはもちろん彼が打席から素早く飛び出し、そのまま全速力で一塁を駆け抜ける、わくわくするような内野安打を数多く稼いだからで、こういった足の速さの様な数字はここからは見ることができません。すべて「運」と言う言葉に収束してしまうのです。とはいえ、やはりこの年イチローが記録した.085は非常に高い数字でありますし、翌年は-.010とマイナスの数字を記録していますので、実力以上に運不運の影響力が大きいという事実は変わらないと言えます。ただ、xBABIPは打者の実力の真のBABIPとは言い切れない、ということです。だからこそさまざまな指標を組み合わせて多角的に物を見ることが重要ですね。

 では次に、どれくらいの実力あるいは幸運が首位打者には必要なのかを見てみましょう。

 最初の表が実際の数値、次の表がリーグ内の順位です。やはり目立つのはLuckの着順で、のべ20人中6人が1位、9人が3位以内の数字。逆にLuckが6位以下で首位打者になったのはわずかに7度に留まっています。また、Luckは全員がプラスの数字を記録していて、決してマイナスの選手はいません。つまり実力もさることながら、運も良くないと首位打者になることは困難だということですね。

 一方でxBABIPが1位で首位打者を獲得したのは06年のFrady Sanchezただ一人です。この時のLuckは+.021の17位で、決して悪い数字ではなく、一般的には良い方ですが、首位打者の中では平凡な数字です。

 この間のその他のxBABIP首位の選手を確認してみると、2012年のDexter Fowlerと2004年のLyle Overbayを除いていずれもLuckでは首位打者よりも低い数字が出ていて、05年のJuan Pierre、06年のAdam Kennedy、08年のAndre Ethier、10年と13年のJames Loney、12年のRobinson Cano、13年のGregor BlancoはLuckでマイナスの数字を出しています。つまり、Luckの方は実力と一致しているとは言いかねる、と言うことがわかりますし、ここは本当に運なのだという感じがします。

 また、Michael Youngは07年11年と期間中2度のxBABIPトップをマークしているのにこれらの年は首位打者を取れず、05年にxBABIP2位で首位打者になるということを起こしていて、これこそ、ある程度の実力以上は運不運の問題だ、と言うことがわかる恒例の様な気がします。

 なお、非常に注意を要するのが04年のNLでして、この年Barry Bondsという男が.362で首位打者を獲得しています。2位がHeltonの.347ですから結構ぶっちぎっての首位です。ところがこの年、BondsのBABIPは総合30位。xBABIP.293は過去10年で最低の数字。さらに総合22位のLuckも一番悪い順位での首位打者獲得となりました。この年のBondsは617打席に立ちながら232四球(120敬遠)、9死球などがあり、わずか373打席に終わっています。さらに45HR41三振という記録により290打席程度しかBABIPの対象になる打席がありませんでした。逆に290打席に追加して45安打分がフリーで追加されている形なのでBABIPに関わらず打率が急上昇する結果になっています。そのためxBABIPが低く、BABIPも低く、Luckも大したことないにも関わらず首位打者を獲得するという不思議なことが発生しています。…にしても本塁打率.121は化け物の様な数字ですね。

 さて、そのBondsは置いといてそれ以外の打者では、皆ほぼxBABIP.300は確保しており、15名は.310以上をマークしております。つまり、xBABIPは.310以上くらい、それに加えてLuckで+.030くらいの幸運が首位打者への道と言えるのではないでしょうか。運も実力も兼ね備えた打者のみに与えられる、非常に限られた称号と言えると思います。

 ちなみに、12年をはじめとしてMiguel CabreraはBonds程ではないとはいえ、xBABIPもLuckもそれほど高い数字は残していません。それでも高い打率を残しているのはやはりBonds同様高い本塁打率に加えて、球を捉える技術の高さを示しているものと言えるでしょう。

 また、Mauerは13本塁打、9本塁打、27本塁打と言う程本塁打数が多い打者ではありません。しかしながら54三振、50三振、63三振と非常に少ない三振数がxBABIPに近い打率を残す結果となっているための首位打者獲得と言えると思います。これも球を捉える技術力の高さによるもの、と言えるでしょう。他も。過去の首位打者はいずれも三振数が少なめで、球を捉えることが得意な打者がずらりとならんでおります。三振が少なくすることが首位打者への道であるのも間違いではないと言えます。

 その逆の結果になっている打者もいます。2012年のDexter Fowlerです。この年の彼はBABIP.390はリーグ1位、xBABIP.343もリーグ1位、さらにLuck.047はリーグ4位、本塁打は13本、と運も実力も兼ね備えた打者でした…バットに当たれば。454打数に対して128三振を喫し、K%24.2%はキャリアワーストでした。そのため、打率は.300とリーグ12位にとどまり、BABIP3位、xBABIP5位、Luck7位ながらも530打数で96三振、三振率11.3%のPoseyに首位打者を譲る格好になりました。三振数が首位打者争いに大きく影響した年ですね。

 つまるところ、首位打者を獲得するためには

・高いxBABIP(できれば.310以上)を記録するだけの球を確実にとらえる能力

・リーグでも上位、できれば5位以内に入るだけの幸運

・たくさんのホームランを打つ能力

・極力三振をしないだけの技術

 これらを上手く持ち合わせた選手のみが獲得できるタイトルと言えます。まずは高い実力を兼ね備えること。これが最低条件でノミネートされる打者はリーグに10名いるかいないか…。さらに幸運という自分では(ほとんど)いかんともしがたいものを呼び寄せた選手。これが首位打者ということですね。不運な打者にはLoneyの様に10年以内に2度も最優秀xBABIPを記録しながらも首位打者はおろか打率3割すら遠い壁の向こう側という選手もおります。また、これを見てると、Troutが首位打者を取るのも時間の問題なんだな、とも思いますね。。。

 そんな訳で、私は遅い夏休みを獲得して21日からイランの方へ行ってきます。Baseball Bridgeとは袂を分かちましたが、色川氏と共に今後もイランの支援を続けていくつもりです。まずはイランの視察が最初にすべきこと。そこで色川氏やその他関係者と綿密な打ち合わせを行い、日本でできること、すべきことの洗い出しを行います。宿題をたんまり抱えて日本に帰ってくることとなると思います。イランの様子等についてはこのブログでも紹介させてもらえればと思いますし、そこでイランの空気を少しでも感じてもらい、それで是非一緒に仕事したいということがあれば、ご一報ください。

 まだまだこのプロジェクトでは人数が足りません。日本でもイランでもできることがたくさんあります。本気でやりたいという人がいれば、お願いできればと思います。