イチローは明確に打席のアプローチを変えている
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。本年もRayを釣りたくてをよろしくお願い致します。
一先ず、本記事より先の「今年・今季」等の言葉は2015年シーズンを指し、「昨年・昨季」等は2014シーズンを指すことをお知らせします。混乱を防ぐために。。。
新年一発目の記事については色々考えたのですが、考える前に手が出る性格なものでできた記事から書いて行きます。珍しく日本人選手についての考察です。しかもそのターゲットは初めての試みとなるイチロー。どうなることやら。。。
と言う訳でイチローの昨季までの成績を確認していきましょう。ここはもう有名なところなのでさらっと。
安打数・盗塁数は素敵な数字ですね。また大きな怪我なく21世紀のMLBでずっとプレーしていることも特筆すべきでしょう。
パワーが少ない打者にしては良いWARかなぁと思います。
よくイチローは出塁率が低いと言われますが、出塁率は高い打者ではあります。ただし、それは高打率によるもので、四球数は少な目です。
しかし、xBABIPと比較すると、べらぼうに打率が高い訳ではありません。確かに全盛期はややプラスの数字が多いですが、それは彼自身の一塁までの走塁力で多くが説明できると思いますし、05年のようにマイナスを記録する年や02年の様にほぼ実力通りの年もあります。なので、一概にイチローの出塁率が低いというのは誤りだと感じます。
さて、ここまでが普段私が使ってるスタッツ類。やればできる子。短くなりました。さて、本題です。ここから12年以降イチローの打席でのアプローチの変化について確認していきたいと思います。
まずはアウトに要した球数数(P/O)と打席当たりの球数(P/PA)を確認しましょう。P/Oについては記事下のリンクを確認してください。これを見るといずれも水準よりも低い値で推移しており、最近流行りのマネーボール好きの人達からは不評を買う原因でもあります。もっとも全盛期はP/PAに対してP/Oはかなり高く出ていて、やはりイチローのアウトにならない能力は低くはなく、むしろ高い方だとも言えることさえあります。そしてP/PAもP/Oも12年で底を打つとそこから急上昇しています。14年のP/O5.74はリーグ平均を上回り、キャリアでは5番目の高さになっています。打率.321、出塁率.388を記録した02年よりもアウトに要する球数は多かったのです。
グラフで見るとその急角度な回復ぶりは目を見張るものがあります。特にP/PAは過去最高を記録しています。つまり、イチローはよりじっくりと球を見るスタイルに変わったのではないか、と考えられます。
より詳しく見ていくことにします。
カウント別の打席の割合を求めてみました。スポナビの仕様の都合上やや詰めた表示になっています。見にくいかと思いますがお許しを。で、見にくいのでグラフにしてみました。
が、まぁかえってごちゃごちゃする結果に。なのでカウント別に違うグラフにしました。13枚続けて見せます。見るのは面倒でしょうから一番最後だけ確認してもらっても構いません。
□0-0
□1-0
□2-0
□3-0
□0-1
□1-1
□2-1
□3-1
□0-2
□1-2
□2-2
□3-2
□All
これらを見てみると12年以降のイチローの試行錯誤と、特に14年でのアプローチの変化が非常に良くわかります。0ストライクでボールが先行するシチュエーションでは急激な割合の低下が発生していて、一方2ストライクの割合はボールカウントに関わらず上昇しています。また、3-1の打席の割合も上昇していて、一方で1-1のカウントの割合は下落しています。つまり、ストライクを取られるまでは球を見ていく方向に変わっていると言えます。フルカウントの割合が急上昇したのも間違いなくより球を見ていく方向に変わったからでしょう。初球打ちが減少しているのもそれを裏付けるデータと言えます。
一方で、0-1や3-1の割合が上昇していますし、2-1も13年よりは上昇しました。これらはやっぱり追い込まれたくないイチローの心理や、打者優位のカウントで甘い球が来たらそれは積極的に打つという様な内容を示していると考えられます。
各ストライクカウント、ボールカウントごとの表にしてみました。
ボールのカウントごとに見るとやはり1ボールでの打席数が急降下し、3ボールでの打席割合が急上昇しています。2ボールもやや上昇しています。その結果、0ボールと1ボールでの割合が初めて逆転することになりました。
また0ボールでの割合は10年以降高い水準での推移があります。これについては色々可能性がありそうですが、ここでの考察は避けておきます。(泥沼になりそうなので)
とにかく、イチローは1ボールではバットを中々振ってくれなくなり、3ボールまで待つことが増えたと言えそうです。
一方、ストライクカウントでは0ストライクでの打席数が激減し、2ストライクでの打席数が急上昇しています。またこれらは13年14年と継続した変化であることもわかります。これは極力初球、ファーストストライクを振らずに、追い込まれるまで我慢するようになった変化だと言えます。
以上のことから、間違いなくイチローは打席では早打ちをせず、じっくりと球を見ていくスタイルに変化しようとしており、意識的な変化だと考えられます。理由としてはNYY移籍以降の変化であるため、NYYのチームとしての指示の可能性もありますし、イチロー自身の危機感等による、能動的な変化なのかもしれません。いずれにせよ、イチローも衰えてきており、それを補うため、必死にMLBに対応しようとして苦慮していることが分かります。いくら殿堂入りが噂されるスーパースターと言えども、MLBという超人たちの集まる場所ではかなりの苦労を強いられるのでしょう。本当に恐ろしい場所です。
また、これだけイチローが苦慮してスタイルを変えて、生き残りに躍起になってはいますが、BB%の大きな上昇は見られず、むしろK%のみが上昇しているという非常に皮肉なことがおこっています。つまり、結果がついてきていないという状況であり、今後も苦戦することが予想されます。逆に今年、例えばBB%が10%を超えるような数字を記録した場合、出塁率は大幅に上昇し、再び平均を超えるレベルの出塁率を記録できるでしょう。そうなった場合、彼の足を見せる可能性を考えると、MLBでの人生が伸び、通算3,000本安打に近づくことができるのではないでしょうか。彼のさらなる活躍を期待します。
☆本日のおまけ
TBはAsdrubal Cabreraと1年8Mで合意したとのこと。一体どこにそんな金があったのか、という感じですが、大量に整理した外野手他から出てきたと考えましょう。またこれにより二遊間の選手もFranklin、Forsythe、Escobar、Zobさん、Cabreraと飽和状態に。このうちの1-2名がトレードされるのでは?と噂され、特に放出が既定路線だったZobさんの近辺が騒がしくなってきました。さぁどうなることやら。
Cabreraはパワーのある遊撃手でセカンドも守れます。何よりもTBにもっとも足りなかったパワーを補える存在として期待しています。場合によってはDH他での出場も考えられると思います。彼についてのアナリシスも近々行いましょう。
~以下、過去のP/Oの議論についての記事です~
・もっともアウトがとりにくい打者は誰?
・もっとも効率よく野手を打ち取る投手??
・もっとも効率よく野手を打ち取る投手? その2
・もっとも効率よく野手を打ち取る投手は?その3 救援投手は球数なんか数えちゃいない
・もっともアウトがとりにくい打者は誰?その2 投高打低は統一球のせい?
・もっともアウトがとりにくい打者は誰?その3 投高打低は統一球のせい?解答編
・もっともアウトがとりにくい打者は誰?その4 打ち取りにくい選手オールスターを作ってみた
・今更ながらDeJesus獲得の根拠を考えてみるについて追記する
・アウトが取られにくいチームは得点力が高い?~当たり前だろ?を別な角度から~
・投手の運・不運について LOB%を再考する(おまけ編のみ)
・今シーズンもっとも打ち取るのに球数を要した選手は誰?