Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

J1の順位とピタゴラスの定理を用いた想定される勝ち数の誤差

 ピタゴラスの定理というものがあります。直角三角形で使うA^2+B^2=C^2という奴ですね。が、今回はこれではなく、近年(と言ってももう10年以上前から)野球界で使われている勝利数を想定する数式を使いたいと思います。野球界で流行っているSABRメトリクス(せいばーめとりくす)で使われている公式です。

 さて、サッカーの試合に勝つためにもっとも重要なことはなんでしょうか。超絶テクニック?誰よりもはやく、そして長距離を走る走力?自分たちの良さを引き出す戦略・戦術?誰にも負けないという強い気持ち?違いますよね。サッカーに疎い私でもわかることですが、相手よりもたくさん点を取って、相手に得点させないことです。点をたくさん取って、試合が終わった時に相手より得点が多ければ、とりあえずサッカーは勝てます。別にテクニックも走力も戦術も気持ちもダメダメでも最終的に点が多ければ勝てるのがサッカーです。少なくとも私の知らないうちにルールが変わっていなければ。とりあえずルールは変わっていないという前提の下で話を進めたいと思います。

 そういう訳ですからサッカーで勝つためには得点を増やし、失点を減らすことが最重要で、それ以外のことは単なるおまけにすぎない訳です。選手の編成はこの二つの目的を達成するためになされていると言えます。

 ちなみに私は、ブログの他記事を見ていただければわかるとおり、普段は野球関係の記事を多く書いており、サッカーはほとんど素人です。Jリーガー5人名前を挙げろと言われても難儀するでしょうし、J1のチームを全部挙げろと言われても無理、日本代表の選手だってフルネームで言えるのは数名じゃないかと思います。それでも敢えてサッカーの記事を書いているのは、数字遊びが好きなことと、むしろフラットに数字を見られるのではないかと思ったから、そして今回このピタゴラス公式を使って遊んだら思った以上に面白い数字が出てきたからです。なお、私はNPBもからっきしでして、NPBの日本人選手50人挙げろと言われても出てこない気がしています。。。もうMLBばかり見るようになって15年目ですから。

 このピタゴラス公式、野球ではピタゴラスを英語風に発音しパイサゴリアン公式やパイサゴリアン勝率などと言うことが多いです。ここでもパイサゴリアンで統一したいと思います。パイサゴリアンの式は元々の三平方の定理に非常によく似た形なので名づけられました。式は以下の通りになります。

   想定される勝率=得点^2/(得点^2+失点^2)

 非常に簡単で計算もしやすいことから特にMLBでは広く使われています。これとの乖離が大きい場合は運が良い・悪い、監督の采配が良い・悪い、勝負強い・弱いなどと言われます。私個人的には監督の采配や勝負強さなどは非常に限定されたもので、それ以上に運の要素が強いと思いますが、ここでは議論の対象にしません。

 今回はこのパイサゴリアンを使ってJリーグの各チームがどれくらいこの想定から外れているかを見てみましょう。使えそうなら使ってもらっても構いませんが、実際サッカーではどれくらい有効なのかはわかりません。

 では早速見ていきましょう。

□01

 P勝率がパイサゴリアン勝率、想定がそこから想定される勝ち星数、差が想定勝利数-実際の勝利数で、その差を示しています。

 見たらわかるのですが、ヴァンフォーレ甲府が非常に少ない得点と多めの失点数ながら5勝と健闘しています。その結果、想定より2.7勝も多く出ています。甲府と、+0.3勝のサガン鳥栖以外の各チームはマイナスの数字が出ています。これはやはり引き分けという条件がついてくるサッカーと引き分けの無い野球(MLB)との決定的な差でしょう。マイナスが多くもっとも損していると思われるチームがベガルタ仙台で彼らは4.2勝分も損している形になります。逆にやや得していると思われるのが甲府鳥栖以外にはFC東京が-0.2勝と悪くない数字を出しています。サガン鳥栖-0.7、松本山雅FC-0.9と続いています。

 これを見ると、マイナスの数字が多く、二乗と言う係数が正しくないと考えられますね。

 野球でも2乗だと乗数が大きすぎて実態を表しきれない場合があり、この乗数をいじることがあります。そのパターンとして開発されたのがパイサゴ1.83です。これは単純に2乗だったところが1.83乗になるだけです。電卓や手計算ではできないところがやや不便ですが、excel先生に頼めば一発です。通常のパイサゴリアンは簡易版として出先とかでふらっとやってみたくなった時用だと思えば良いでしょうか。ケータイとPCの差みたいなもんです。

□02

 これでの想定にしてみると少し数字が良さそうです。とはいえ、マイナスが多く、これまた実用には適さないでしょう。やはり引き分け数の想定が難しいところなのではないかと思います。

 さらにMLBではこの乗数に対して得点力を加味したパイサゴPATと言うものが出来上がりました。これは乗数をそもそも((得点+失点)/試合数)^0.287で出てきた値を挿入するものです。これにより得点が各チームの乗数を変えることができるのです。

□03

 しかしでもまだまだ良い値は出ませんね。Xが乗数になります。ただし、甲府がかなり現実に近い数字が出てきている等、多少の改善にはつながっているとみることも不可能ではないです。

 アメリカではこれがバスケ(NBA)やアメフト(NFL)などへの応用が進んでおり、独自の乗数が出ています。これを当てはめてみましょう。

□04

 NBAは乗数が13.91などと言うべらぼうな数字のため、とんでもない値が出てきてしまっています。まぁNBAの得点力の高さはスポーツ界においても異常ですからね。

 NFLの方はそれ絵に比べると大人しい数字ではありますが、現実離れした数字です。アメフトは2.37という乗数ですから、やはりサッカーにはふさわしくありません。サッカーの場合は2よりも小さい数字が適切だと思われますし、野球ですら1.83と言うことを考えるとそれよりもさらに小さい数字が良いと思われます。

 また、どうしても引き分けの影響を小さくすることは困難だと考えられます。なのでこういうこともやってみました。

□05

 差がかなり小さくなったことが分かるでしょうか。これは試合数から平均的な引き分け数を引いて計算した物です。正確には試合に対する引き分け率を計算し、1から引き、勝敗のつく試合率を、パイサゴリアン勝率にかけたものです。これによりかなり正確な値になりつつあるのではないでしょうか。まだ下位チームがマイナスが多く、上位チームにプラスが多い傾向が気になります。ここら辺の調整が必要になりそうですが、私はやりません(笑)

 ここから見るとやはり甲府FC東京は勝ちすぎ、鳥栖と浦和も幸運であると考えられます。一方で不幸なのは仙台と柏レイソルと言ったところでしょうか。ただし思ったよりも精度よく出ている様な気もします。

 とりあえず今日の遊びはここまで。

☆本日のおまけ

 OODAループとサッカーの日本代表について考えることがあります。以前も書いたのをちょっと改訂します。

 OODAループ(うーだループと読む)とは人間の行動原理を基本的に分解した物で

・観察(Observation)

・方向性の決定(Orientation)

・判断/仮説作成(Decision/Hypothesis)

・行動/試行(Action/Test)

の四段階に分かれるよね、と言うものです。これらの4段階の頭文字をつなげてOODAとなるのです。確かに考えてみればこの4段階に分かれるでしょう。ここら辺の詳細に関してはミリタリー系の夕撃旅団・改というHPがかなり詳しく記載しているので、興味のある方はここを見てください。

 これは人間の基本的な行動様式ですので、PDCAサイクルとかは全く関係が無いことを注意してください。

 スポーツや戦争、ビジネスの場ではこのループの回転速度を上げることが重要になってきます。いわゆる判断速度を上げる、迅速な意思決定をするという奴ですね。この判断速度を上げる方法ですが、一般的な方法ではこのOODAループの輪から抜け出せない以上、どんなに頑張ってもあんまり変わりません。

 ところが、これを高速化する方法があるのです。それがループの概念化です。ある情報が入ったところで、何を行うかの方向性の決定に対してある程度の共通概念ができており、観察した瞬間にその行動に反射的に移れる状況にすることです。お湯を沸かしてるやかんに手が触れたら反射的に手をひっこめてしまう、これを行うのです。とはいえ、これは非常にシンプルな内容にしか効果がありません。パンチが飛んできたら避ける、とかその程度です。がんばっても1死ランナー1塁と言う状況で強いゴロが飛んできたらゲッツーを狙いに行く、くらいの行動です。

 これがいわゆる体に染みつかせるとか筋肉に覚えさせると言われるものです。

 で、本題です。日本代表が遅い遅いなんて言葉、聞きますが、決して選手の足が遅いとは思いません。じゃあなんで遅いのって言ったら多分このOODAループを回すのが遅いのではないかと言う考え方を持っています。逐一状況を観察して、状況を判断して、方向性を決定し、実行する、と言うループをわざわざやっていればそりゃあ遅くなるに決まっています。そこをある種チーム全体で共有化したい(している)概念があり、「何も考えずにその概念の遂行だけを反射的に行う」ことができればより速い攻撃・守備が可能かと思います。

 この反射的に遂行できる概念については人間の都合上非常にシンプルなことしかできません。そのため、攻撃であれば得点を奪うことに直結した概念化が必要だと考えます。それこそゴールが見えたら打つくらいの感覚です。サッカーの場合はこのパターンと言うのが無数にあるので大変ですが、いくつか絞って練習することも必要なのではないでしょうか。「こういう意識を持つ」では無くて「体が勝手に反応する」が必要なことと言えます。

 もう一つは相手のOODAループを混乱させるために必要なことは、相手に多くの情報を与えて、OODAループを回させないことがあります。反射的に行うこともその一環で、相手が観察して、行動を決定している間に、一方的にこちらはやるべきことを考えずにできるからです。もう一つが相手に情報を多く与えて、どれから対応して良いかわからない状況にすることです。これが何かと言うと、〆切15時までの書類をラストスパートで片づけている14:55に、電話が鳴る、上司が緊急で話がと声をかけてくる、さらにケータイもポケットでなっている、ついでに自分あてに来客、遅刻に厳しくて怒ると怖い別の部署の人が14:45開始の会議のために待っている、みたいな状況が発生した時です。要するに相手にこのように急いで対応しないとヤバい案件をいくつも同時につきつけ、テンパらせることです。よくサッカーで数的有利などと言う言葉を聞きますが、この数的有利と言うのは単純にマークが外れやすい以上に、この相手のOODAループを麻痺させる、テンパらせることを目的にしているのではないでしょうか。そのため、いくら数的有利のシチュエーションでも、「全員が同じ意識で動いて」しまうと、相手は何が発生するか簡単にわかりますから、対応が楽になりますね。アメフトで言うと、RBが走るルートを敢えてつくらせて、そこに走り込んできたところを潰すランフォースに近いイメージですね。逆に相手に混乱を起こさせるのは相手に発生しうるオプションを2つ3つ与えて、正解を与えないプレーです。やっぱりアメフトに例えるとオプションプレーでのLBフリーズの様なものですね。相手のLBの動きを見て、RBに走らせるのか、QB自ら走るのか、パス投げちゃうのかを判断する様なものです。こういったことをサッカーで意識させるには何かと言うと、やっぱり攻撃陣が同時に様々な動きをして、相手DFを混乱させることでしょう。サイドの選手が深く入った時に単純なクロスを受ける動きを全員がするのではなく、違う攻撃方法を取っている選手がいて、DFが両方に対応しないといけなくなるようなことですね。これは先述した概念化とは真逆に近い動きになりかねないので注意が必要です。つまり概念化は本当にゴールへの一つ簡単な動きにしないといけないですし、監督からの指示命令系統が非常にシンプルである必要があるのです。

 正直サッカーではゴールの形は問いませんから、数を多くとった方が勝ちのスポーツですから、そのプロセスはどうでもいいんじゃないかと外野の私は考えます。

 というところで本当に今日はおしまい。