Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

石川くじに当たりは残っているのか 成績の上がり目を考えてみる

 私と同じくスポナビ+でブログをされてるaaakkkさんからの要望があったということで、専門外ではあるのですが、打率2割くらいと低迷しているベイスターズ石川雄洋選手の成績に今シーズンまだ上がり目があるのかどうか、ちょっと考えてみようと思います。

 先にお伝えしておきますが、私の専門はMLB Tampa Bay Raysでして、NPBは基本的に門外漢。今年の石川選手のプレーは見ていません。イシカワ選手なんて言ったらTravisの方が馴染みがあるくらいです(笑)また、他の記事を見ていただければわかるとおり基本的には数字いじりが好きなタイプです。セイバーかぶれとも取れるような内容になっていますが、余り気にしないでください。わからない指標があったら基本的にはGoogle先生辺りが詳しいので、聞いてみて上げてください(手抜き)。ただ、東京生まれのNew Jersey育ち(自称)、中高大と横浜市に通い、今も神奈川在住ってことで、ベイスターズファンは周りに多くて、門前の小僧状態なのと、毎年1度は浜スタに行くことがありますし、ベイスターズには悪い印象はあんまりもっていません。むしろ好きなチームの一つで馴染みがあると言っても良いと思います。

 なお、今回議論の対象にするのは今後の石川の打率・出塁率とそれにかかわる数字についてとします。守備が云々、走塁が云々、リーダーシップが云々は対象としません。純粋に数字だけで話を進めます。そこんところ誤解しないようよろしく。

 長い記事になりそうだけど、連載にするほどのことでもないし、他に連載しているものもあるんで1度の記事でまとめちゃいますね。

 と言う訳で彼のここまでの成績を見てみましょう。基本的に数字は

プロ野球ヌルデータ置き場さん

・Fangraphsさん

Baseball Referensさん

スポーツナビさん

 あたりからの引用となります。それ以外にこまごまと自分で計算したりしています。ここらへんねー日本のサイトは不便だわー(笑)BRも日本人サイトオープンしてますけどBABIPですら計算してくれてないですし…。

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 ざっと石川の成績です。とりあえずはBABIP計算用にかいてありますが。来歴とかはこれを読んでくださっている人の方が詳しいので、私が改めて書く必要はありませんね。

 さて、彼の成績を色々見てみますと、まずはパワーレスな打者です。基本的に本塁打は期待できない選手であると言えます。通算でもわずか18本塁打ですからね。

 続いて打率ですが、ここはあまり高くありません。平均的な打者くらいでしょうか。通算で.260である程度のサンプル数があるところでは.240-.295くらいのレンジで動いています。そういう意味では安定感はあるように感じますね。ただし、今年はここまでわずか.202と低迷し、このままだとキャリアワーストを記録しそうな勢いです。

 パワーレスな数字は長打率でもわかります。通算はわずか.322と正直言ってレギュラー失格クラスです。キャリアで1度も.400を記録したことが無いのは問題でしょう。。。IsoPも.100を記録したことが無く、通算でわずか.062です。まずもって長打は期待できない打者で、さらに打率は.240-.295の平均的な打者ですから、打席での貢献度は平均以下の打者だと言えます。ただし、今年に限るとIsoPが.064とキャリア平均程度のパワーは示せていますので、パワーが衰えていることはなさそうです。

 出塁率を見てみると、通算でたったの.308で、長打率共々ちょっと悲しい数字です。おかげでOPSもようやく.600を超える位となっています。ここから見ると、打席ではさらに貢献がなされていないと言えます。今年の出塁率を見てみると.237とこちらも事実上のキャリアワーストをたたき出しそうです。IsoDが.035程度ですので、こちらもキャリアより悪い数字が出ています。

 次に四球率と三振率を見ていきましょう。SABR的にはいずれも打者の実力が大きく寄与し、安定感のある指標だと言われています。確かに各打者で大きく見ていくと大きな変化は少なかったりします。石川の成績を見てみると、まず、三振率は決して低くありません。通常ですと大体14-20%程度の三振率があります。多すぎるということはありませんが、決して少なくありません。つまりバットにボールが当たらない打者だということです。

 通例、こういった三振が多い打者はカウントを深くすることを好んでいるため、四球率も高くなることが多いですが、石川の場合は今度は通常は5%台以下とかなり少なくなっています。この結果、打率は低いし、出塁率も低い結果につながっていると言えます。

 ここで気になるのが彼の三振率の悪化でして、2015年を境にただでさえ悪い三振率がさらに悪化しているのです。これが衰えによるものなのか、打席での姿勢に寄るのかはわかりません。なぜかというと、他の指標には大きな変化がないからで、頭を悩ませるところです。

 また、四球率は12年と13年だけやたらと高く出ているのが見て取れます。結果的にこの年だけ異様に良い成績が出ていて、石川は出来る、と思わせる年になっています。ちなみに三振率は変えずに四球率を上げたので、これは彼の技術力の高さを示していると思いますし、それを再現できるだろうと思ってしまうことがありますね。それ以降、四球率が下がったのは忘れてしまったのか何なのか。。。ちなみに12年はDeNAの初年度でして、このことから鑑みると、コーチ陣かフロントかわかりませんが、そのあたりにマネーボールでも読んだ人がいて、四球率を上げろと指示がでたのかもしれません。それを実現できるのは技術のある打者だという証左ではありますが。。。

 そしてお待たせいたしました。BABIPについても見ていきましょう。石川はBABIPがかなり高く出る打者です。4,000打席弱であるので、若干まだ信頼性が置けない可能性はありますが、それでもまぁ大まかな傾向はつかめるとして話を進めますね。BABIPは通算で.321、普通にしていれば悪くて.300、良ければ.350が期待できる打者です。これはつまりバットとボールが衝突しさえすれば通常よりは高い確率で安打にすることが出来るバットコントロールの良さも示しています。本当は打球傾向だのなんだのを使って実力的に見れるBABIP(=xBABIP)と比較したいのですが、日本では不可能なので、こういう持って回った言い方しかできませんが。で、三振が多くて四球が少ない打者ですから、このBABIPの高さに依存した打撃をしていた訳で、言ってみればこれが石川の生命線だった訳です。これが今年はここまでたったの.256と大幅に下落しているため、打率が下がってしまっているのです。

 BABIPは実力もさることながら、運の要素にも大きく依存します。大まかに言えば正規分布っぽい形になり、平均に回帰するような動きを見せます。つまり平均から大きく外れた成績を残している場合は今後はより平均に近づくような可能性が高い、と言うことです。

 統計学ですから、100%正確だとは言えません。こういう可能性が高いというくらいです。

 ですのでBABIPに依存する打者はかなり運に左右されます。ムラッケとかくじとか言われるのはそういう打者であることが結構あります。逆に四球が多い打者は調子が悪くても安定して「アウトになることを避けることができます」。例えば阪神の鳥谷のように。

 さて、ようやく本題です。ここから石川の成績が上がるのか下がるのかを頑張ってみていきたいと思います。大体こんな仮説が考えられます。

1:これまで石川は運が良かった。そのためBABIPが高いが、実際はもっと実力は低いので、BABIPが平均=もっと低いところへ回帰する動きで下がっている。つまりこれから上がり目は少ないのではないか。使い続けても成績は上昇しにくい。

2:石川のBABIPは元々が高いため、今のBABIPは明らかに低い。今後は平均=もっと高いところへ回帰する動きがある。つまりこれから成績は上昇するのではないか。

 これのどちらが正解かを予測するのは非常に困難です。投げてしまって申し訳ないですが。が、ここで終わってしまっては「Rayを釣りたくて」の名折れなので(ちょっとだけプライド)、石川に似た打撃傾向の選手と比較したいと思います。つまり三振が多くて、四球が少なく、それでいて高めのBABIPを残せる打者。

 過去5年間のPL、CLそれぞれの規定打席以上の打者を調べ、それぞれの打者のキャリアを観て、この.256というBABIPが異常だと思えるのか、それともこれまでのキャリアの.321が異常だと思えるのかを見てみたいと思います。

 んで、調べた結果、両リーグ合せて30名も、似た様な傾向を示した打者を見つけてしまいました。もっといると言い張ればいるのですが、疲れそうなので、思い切って外してる打者もいます。なんかそろそろこの記事3,000文字を越えてきたけどあんまり気にしない方向。

 全員を調べてもしょうがないので、特に似てると思われる打者。5年間で複数回もピックアップしてしまった打者と、キャリアで5年以上規定打席をクリアした打者に限って成績をもうちょっと詳しく見てみて、その中でも特に似ているだろうと思われる打者をピックアップしました。頑張って7名まで絞ってみました。その7名はこんな感じ。

・巨人  坂本勇人

・広島  菊池涼介

・日ハム 陽岱鋼

・福岡  松田宣浩

オリックス? マット・マートン

・横浜  アレックス・ラミレス(監督だけど)

・元ヤクルト他 稲葉篤紀

 全然違うだろーって選手も結構混じってると思いますが、今回はとりあえず四球と三振の比率などで調べていますし、パワーは置いといてみているので、こんな感じの打者が揃っています。いずれも振り回す打者たちです。他にも荒波とか村田修一とか大島洋平とか松井稼頭央とか長谷川勇也とか今宮健太とか秋山翔吾とか調べたんですけどね、いい感じにリンクしたのがこの7名でした。それぞれについて成績を見つつ、.256というBABIPがあり得るのかどうかを調べてみましょう。

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 まずは現監督のラミレス。パワーナンバーは圧倒的に違うのですが、K%とBB%、BABIPなどは結構良く似た数字が出ているのが分かると思います。これを見るとまず、三振率が数年にわたって高めに出るのはおかしくないだろうというのが分かります。つまり石川の三振率はシーズンを通してこの数字になる可能性はあります。

 逆にBABIPですが、衰えの隠せなかった最終年を覗いて、悪くても.280(06年)を記録していて、さすがに.256という数字は維持できない様にも思えます。

 また、ラミレスが監督と言うことと1stストライクを積極的に狙うという指示が出ていたらしいことを考えると、四球率の改善はなさそうですね。ラミレスから20-45本程HRを抜いた様な成績になりそうです(笑)

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 ついでに外国人繋がりで日本に帰ってきちゃった(でいいの?)のマット・マートン。彼も高いBABIPと低いBB%が持ち味でした。石川程極端な三振数ではないですが。彼の場合も.288と記録した12年などがありますが、基本的には非常に高いBABIPの持ち主でしたし、こういう打者が.256と記録するのは非常に稀なことだと思います。つーか未だに引っ張るけどなんで阪神はこいつを放出しようと思ったんだ?(笑)良い打者じゃん。

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 サクサク行きましょう。次は一番サンプル数が集まった打者。2,000本安打もクリアした稲葉。高いレベルでBABIPが安定していますし、やっぱり最低は晩年を除くと1997年の.273です。そう考えるとやっぱり.256というBABIPはまだまだ低く感じますね。

 もう一つ彼で注目したいのは08年09年だけ高いBB%を残していること。07年に打率.334を残したことも原因かもしれませんが、その後もとに戻っているのです。石川も同様の傾向が12年13年だけ見れましたし、これくらいならあり得る数字なのでしょう。

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 入れ替わりに近い形でレギュラーになった陽。打席数は石川よりも少ないですが、彼もやはり高いBABIPを残していて、低く出ることはほぼありませんね。注目は07年08年ですかね。07年に109打席で.329と残した後で、08年に.123打席で177と急落させています。つまり100打席超えていてもこれくらいの変化はなされて当然だと言えるのです。まだまだ打席数の少ない石川にしてみればまだまだこれからと言う感じでしょうか。

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 サンプル数は少ないですが、やはり荒っぽい打撃だという印象のある菊池。彼で注目なのはむしろ14年。.358と高いBABIPに救われて、.325/.352/.456でOPS.808と凄まじい成績を残しましたが、翌年成績を下落してしまいました。これ、14年が実力なのでは無くて、13年15年が実力で14年がフロックなのだと考えた方が良さそうです。逆に言うとBABIP.300程度の打者でも.360近いBABIPを年間通して残す可能性はあるということです。逆に言うと今度は低いBABIPも残してしまう可能性は無くはないということですね。もっとも菊池の場合はまだサンプルが少なく、正直ちょっとわかりませんが。。。

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 パワーヒッターと言う印象があると思いますが、松田。彼も基本的には四球率が少なく、三振が多い打者です。あのパワーは完全に振り回して得られたものなのでしょう。BABIPは高めで安定していますが、10年だけ.277と低く出ていますね。それでも.256よりは高いと言えます。.256などというBABIPが出ている場合、日本だとそもそも試合に出れない可能性も高くあると思いますしね。

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 最後の打者は巨人の坂本。今年はここまで絶好調ですね。非常に安定した打者で彼もBABIPが低く出ることはまれですね。但し高く出ることもあって、たまに高く出ると高い打率を残してしまい、結果的にファンの期待値を大きく押し上げる結果になるのです(笑)石川にもそういう時代がありました(笑)なお、今年は絶好調ですが、さすがに今のBABIPを維持するのは困難でしょう。多少は下落すると考えられますが、これまでの傾向から言って.350程度のBABIPをマークすることは不可能ではないと思います。

 ここまで駆け足で(その割に字数は多い)、7名もの選手を観てきましたが、何が言えるかと言うと、ほぼ間違いなくレギュラーでいる限り.256というBABIPを維持するのは困難で、大体.280くらいは記録できるのではないかと思います。ただし、漫然とサイコロを振っている(試行回数を増やす=打席数を増やす)だけでは、BABIPが.350を記録するような選手の逆、.260程度のBABIPになってしまう可能性も高くはないですが、0とは言い切れないのではないかと思います。

 私が、どちらかに張れと言われたら.280のBABIPに張りますが。また三振率・四球率はこのまま維持されていくことは十分にあり得ると思いますし、むしろ改善する方が難しいような気すらしますね。いずれにせよ、今の段階ではちょっと打席数が少ないので、どこに転がってもおかしくないです。最後にこんな絵を見せておしまいにしたいと思います。

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 これは少ない打席数での極端なBABIPの例でパッと思いついたものなんですけど、Tampa Bay Rayに所属していたMatt Joyce外野手(現在はLos Angeles Angels of Anaheim所属)の2011年に記録した試合ごとのBABIPの変化です。横軸は打席数を示しています。4月11日くらい、通算29打席くらいまでは不調で1割台のBABIPに留まっていましたが、そこから急上昇。BABIPは4月20日、53打席目くらいで4割を突破し、5月4日通算84打席目で最高のBABIP.435となりました。そこからなんとBABIP4割を6月2日173打席目まで維持。3割7分程度であれば6月中旬、200打席以上の段階まで維持できていました。最終的には.317と平凡なBABIPに終わったのですが、100打席やそこらではいくらでもBABIPはいじれるのだという証左ですね。怪我もしていないのに462打数なのは彼があまりにも左投手を打てないからなのさ。大好きな選手の一人です。

 …この表は作るの大変だからもうやりたくない。あと、excelはページ数増やしすぎると重くなって使いにくくなる。平気で1万超えるデータ扱うのはお前だけという意見も聞こえてきそうですが。

 そんな訳でここからの石川選手は期待できるのではないかと思います。石川くじ、当たりは残っていますよ!!!きっと。

 記事が長くなってごめんなさい。これだけのことを言うためだけにこんなに紙面取ったのさ。細かい成績の予想は打席数が読めない関係でしませんが、.217/.253/.268くらいは最低でも残せるんじゃないかと思ってますよ。多分、.226/.262/.280くらいじゃないでしょうか。すんげーテキトーですけど。普段と勝手が違いすぎて予想値はアレです、はい。

 これを合格と見るか不合格と見るかは人それぞれですが、私は及第点だと思います。…TBの打撃成績を見慣れているせいで合格点が下がってるとかは言ってはいけない。三振が減ればもっと面白い成績になるんですけどねー。。。四球が増えればもっと面白い成績になるでしょうね。それで本塁打も…それはもはや別人だ(笑)

☆本日のおまけ その1

 Twitterのアカウントを持っている訳ではないですが、何人かのアカウントを普通に覗いていると、ちょうど書こうと思っていてデータをまとめてたネタを140文字以内に書いてくれてしまっていることが度々あって(笑)人の発想力なんて似た様なものなのだと感じます。そして結論はやっぱりあの字数で十分だからスピード感は全然負けます、はい。

 後出しは悔しいのでそう言うのが没ネタあるいはここのおまけネタとして溜まっていくことになるのです。。。速報性を重視のTwitter、分厚い内容重視のBlogだと思っているので、分厚い内容を3行でまとめられると悲しいことになるのです、はい。ま、私の精進が足りんってことなのでしょう。

☆本日のおまけ その2

 それでもさー筒香4番にこだわることはないと思うんですよね。3番筒香とか2番筒香とかアイデアはいくらでも出てきそうですが。やっぱり1番2番3番と強い打者でがっちりと固めて、あとは流れで4-7番を決めて、8番投手、9番には足が速いけど出塁率が低いような某打者の様な人を入れる様な打順が良いよなぁと思ったりしてます。ノーチャンスの回ができるのが嫌と言う人もいるかと思いますが、強打者が分散してしまう方が私は嫌なんですよね。MLB(のしかも特定の球団)に毒されてしまっているのがあります。

 ちなみに実力があるなら多少出塁率が低くても2番にフリースインガータイプってのも面白いと思ったりもします。3番が強打者なら勝負に行かざるを得ない場面とかでフリースインガーは嫌ですよね(笑)

☆本日のおまけ その3

 ついでに話題になってるコリジョンルール絡みについて。いろいろ意見はあるし、私の意見は過激派なのでルール自体には文句は言いません。

 ただちょっと思ったのがね。キャッチャー。三塁側にいることは駄目にされちゃいそうなので、今後はバッターボックスの後ろに立ってボールを待って、追いタッチじゃなくて前方に体でタッチしに行くようにすればブロックもないし、死角を払う追いタッチよりも速く正確にタッチできるのでは?(笑)まぁボールがランナーとかぶったりしそうですが。あと追いタッチは面倒なので左利きの捕手の価値があるかもですね。上から見たら左回りに追いタッチに行くのではなくて、逆回転、時計回りで体ごとタッチしに行くのができそうですから。単なる思い付きですみませんね。