Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

ケッピンジャー獲得 ~その理由・期待される役割とは?~

 さて、後追いで少しずつ温めていたネタを書いていこうかな、と思います。

 まず、ダン・ジョンソン様がCWSとマイナー契約。主砲候補でもあったラス・キャンヅラーがCLEとマイナー契約。11年の主砲コッチマンもCLEと契約。11年奇跡の(というか幸運の)WC獲得に大きく貢献したTB戦士達がまた、各地へ散っていくことになります。それぞれの地で頑張って欲しいですね。特にダン・ジョンソン様、あと1アウトと追い込まれたところからのあなたの奇跡の同点ホームランは決して忘れません。

 という訳で今日の話題は表題の通り、先日TBと契約を結んだ、Jeff Keppingerさんについて。

 Keppingerさんは1980年4月21日生まれ。スポーツ各界で選手層が厚い(反則的だけどロナウジーニョとか朝青龍とかミシェル・クワンとかCCサバシアとか)、いわゆる松坂世代の選手ですね。01年にドラフト4巡目で指名されると04年8月20日にNYMでメジャーデビュー。それ以来、バッテリーを除く7ポジションをこなせるユーティリティーとして5球団を渡り歩いてきました。また、なんと言っても彼の特長はキャリア2287打席でわずか142しか三振をしていないこと。パワー面での期待はそこまでできませんが、シュアなバッティングが期待できます。

 ここに、私の疑問点があります。というのも以前から書いているようにTBには同じように器用で多数のポジションをこなせる内野手がZobさんは別格としても、Sean Rodriguez、Brignac、Elliot Johnsonと3人もいます。これ以上増やすことは予算的に余裕のないTBにメリットがあるのか、ということです。(これを書きなぐってる時点では結論は私には出ていません。)

 という訳でKeppingerの近年の成績としょーん君、Brignac、Elliotの成績を比べることによってKeppinger獲得の是非を検討してみようと思います。

まずは一般的な成績から見ていきましょう。今回はKeppingerの過去3年分の成績+11年のしょーん君、Elliot、Brignacの3名分の成績と比較しましょう。

数字が年度、KがKeppinger、BがBrignac、SがSean Rodriguez、EがElliot Johnsonです。

 

  G PA H HR SB CS

11K 99 400 105 6 0 1

10K 137 575 148 6 4 1

09K 107 344 78 7 0 2

11B 92 264 48 1 3 1

11S 131 436 83 8 11 7

11E 70 181 31 4 6 7

Total K 586 2287 582 32 11 7

RBI BB K Ave. 11K 35 12 24 0.277 10K 59 51 36 0.288 09K 29 27 33 0.256 11B 15 10 63 0.193 11S 36 38 87 0.223 11E 17 14 53 0.194 Total K 215 155 142 0.281

 さてざっと眺めてみると同じような成績が並んでいます。まず驚くべきことにKeppingerの盗塁は通算でもわずか11個、成功率も61.1%にすぎません。これは11年のしょーん君と全く同じ成績です。器用な選手の割に足はそこまで速くないのでしょうか。少し期待外れな気もしますが、昨年はBrignacも3盗塁、Elliotは6盗塁でも7盗塁死で成功率46.2%なのでここで大きなマイナスとなることは無い物と思われます。期待されるラインとしては3盗塁1盗塁死って感じでしょうか。

 また、KeppingerはHRがやや多く出てる印象があります。とはいえKeppingerは打数も多いですし、しょーん君も11年でも436打席でKeppingerのキャリアハイを上回る8HRを放っているので、あまり変わらないか、しょーん君には後れを取っている印象です。

 ただしそれを補うかのように、安定した打率を残してるのがこの図から分かるでしょう。Keppingerは通算.281、過去3年でも最低が.256というのに対し、11年の内野手3人組は最高がしょーん君の.223。まぁ打率は当てにはできないとはいえ、この差は大きなものではないでしょうか。

 そして前評判通りのやたらと少ない三振数。例えば(多すぎとはいえ)Elliotが181打席で53三振に対してKeppingerは400打席で24三振。倍以上の打席数で半分以下の三振数。Keppingerのコンタクトの良さを、打率と共に表しているのでしょう。

 ここまで見ると、さすがに長年MLBに生き残ってきた選手だけあって少しだけ3人よりはアドバンテージを持っている、という感じでしょうか。しかし、これだけだと、私自身はかえって獲得に否定的です。残りの3人と決定的な違いは見受けられないですし、控えという意味でも全部で3人もいれば十分な層の厚さであり、$1M以上をかけて積極的に獲得する意味がよく理解できない、というのが本音です。という訳でいつものようにSABARっぽいデータを見比べてみます。

   AVE OBP SLG BB% K% BABIP WAR

11K 0.277 0.300 0.377 3.0% 6.0% 0.280 0.6

10K 0.288 0.351 0.393 8.9% 6.3% 0.298 2.1

09K 0.256 0.320 0.387 7.8% 9.6% 0.266 0.4

11B 0.193 0.227 0.221 3.8% 23.9% 0.254 -1.1

11S 0.223 0.323 0.357 8.7% 20.0% 0.268 2.3

11E 0.194 0.257 0.338 7.7% 29.3% 0.260 0.5

Total K 0.281 0.332 0.388 6.8% 6.2% 0.287 5.3

LD% FB% GB% IFFB% HR/FB 11K 23.7% 28.8% 47.5% 8.7% 5.8% 10K 19.8% 29.6% 50.8% 3.5% 4.2% 09K 18.3% 28.9% 52.7% 5.1% 8.9% 11B 22.5% 43.3% 34.3% 5.2% 1.3% 11S 17.4% 41.3% 41.3% 19.8% 6.9% 11E 13.0% 39.0% 48.0% 12.5% 10.3% Total K 20.6% 29.2% 50.2% 6.5% 5.6%

 ざっと見渡して見るとBB%がやや低い値が出ているため、出塁率が打率の割に低く出ていますが、11年はBB%がキャリアワーストを記録しているためで、本来的には6-9%程度の実力はあります。これを見ると3人衆との違いがはっきり見えてきます。3人衆は軒並みK%が20%を超えているのに対し、Keppingerは例年一桁で通算でも6.2%です。また、フライが極端に少なくゴロが多いのがわかると思います。

 このあたりから見るとKeppingerは常にゴロを打ち、しかも極力三振をしないように常に考えてプレーしているのが伝わってきます。同時に標準レベルの四球数を選びとれる、コンタクトと視力に優れた打者であることがわかります。日本の高校球児っぽいと言いかえられるかもしれないですね。とはいえ、パワー・盗塁等は多くないのでWAR自体は低い値を示しています。もっともマイナスを記録した年はほとんどなく低い値とはいえ例年プラスの値を記録しているので控えや併用される選手としては及第点以上のものがありそうです。

 また、表には示していませんが、左投手相手に強さを発揮してます。3人衆の中ではしょーん君に近いものを感じますが、もっと丁寧なイメージですかね。しょーん君が成熟すると彼の様な打者になるのでしょうか。(それはそれでさびしい気がする。)

 というような感じが彼の打者としての特徴でしょう。では以降は今シーズンの彼の起用法と求められる役割、今シーズンの成績について考えていきたいと思います。

 まず成績ですが、BABIPは平均で.287、ここ3シーズンを見ると.266→.298→.280と非常に安定していますが、.300をクリアはできていません。(ゴロ系右打者なので仕方ない面があると思います。)とすると、今年も大体.270-.290のBABIPが予想されます。この場合、三振もHRも非常に少ない打者なのでBABIP-1分くらいの打率、打率+6分くらいの出塁率と考えられます。Isoは.100~.120くらいなので総合すると.260-.280/.320-.340/.360-.380といったところでしょう。例年非常に安定した打撃を見せているのでこれくらいを計算して全く問題は無いように思えます。問題はこの打撃でSSを始めとする内野をこなせるのか、という問題です。例の3人衆ですが、BABIPが全員.270を切るなど不運に見舞われたところが多くあります。さらにHR/FBも低い値をマークするなど、実力通りに行かなかった面が多く見受けられます。となると3人衆のうちの誰か一人くらいは運に恵まれた打撃成績を見せてもおかしくは無い、と思います。さすがに今年の様な不運を3人が3人とも繰り返すとは思えないですし。特に注目はその中でもパワー、走力を兼ね備えたしょーん君でしょう。出塁率.350、長打率.400くらいであればクリアしてしまってもちっともおかしくないので、そうなったらKeppingerさんの居場所が無くなってしまいます。

 可能性があるとしたら、投手が左だった場合の対応が左打ちのBrignac、スイッチのElliotよりも上なので、Joyceを下げて、RFにZob、キーストーンをしょーん君と分け合う感じならあるのではないでしょうか。

 現時点ではSSのレギュラーという見方も強いですが(過去の実績からするとそうかもしれません)、決定的なツールを持ってる訳でもなく、30過ぎてこれから黄昏に向かう年齢で、となると結局併用されるかな?と思います。さらに心配な点としては06年にKCにいた時以来のALとなるのでALの野球に対応できるのか、という点と若手の多いTBではベテランの域にいるので雰囲気に馴染めないのでは、という点があります。選手のタイプとしてはどちらかと言うと去年のフェリペ・ロペスですが、パット・バール化する懸念がある、ということ。フェリペ・ロペスもダメだったし…。

 といことで$125万の投資先としてはやや疑問を抱く私です。願わくば、彼が内野のお手本となる選手となって、TBの内野を活性化させてくれれば言うことはありません。