Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

ダルビッシュの「捉えられた感じはしなかった」発言に見る日米の違い

なんかまた日本人ネタになってしまいますが。情報量やきっかけという意味で日本人の情報がいっぱい入ってくることに悪いことは無いのではないでしょうか。

 今日取り上げたいのはダルがオープン戦でベナブルに打たれたあの大飛球について。ダルビッシュの発言で現地でも話題を呼んだのが「乾燥もあるし、風もあるので、普通よりは伸びているかなと思ったけど、そんなに捉えられたという感じはしなかった。」の発言について。打った方のベナブルなんかは「現実を受け入れられない」とか、おおむね否定的…というかあそこまで飛んだんだから捉えられてない訳ねーだろ(苦笑)というような感じがあります。さらに早速日本では翻訳・通訳のミスではないかという話も。。。福留の偶然だぞ、もありましたが、これも一切の否定はできないかなぁという感じを持っています。ただ私はこの点に関しては日英の原文同士を比較できていないのでコメントはできません。

 ここで論じたいのは日米の球界での打球の質の違いについて、です。ちょうど良い機会だと思ったので。

 まず実際にベナブルの打球を見てみましょう。ダルビッシュのファストボールがベナブルの外角、高さはやや高いところに入ります。カメラの角度もあるのでしょうけどややシュート回転気味にベナブルから逃げていくように見えます。もしかしたら2シームかもしれません。そこをベナブルのバットが一閃。高く上がった飛球はセンターの高いフェンスを直撃しました。

 さて、ここでダルビッシュの発言について考えてみます。

 1.打球は思ったよりも伸びた。

 2.しかしきちんと芯でとらえられた感覚は無かった。

 の2点があります。まず1について考えてみます。この談話の時も認めているようにMLBの選手は日本人とは比較にならないほどのパワーがあるのは間違いないでしょう。実際打球は湿度と伸びはあまり関係無いので風で伸びた可能性もありますが、一番大きいのは気圧が低かったことによる打球の飛距離が伸びたことではないでしょうか。アリゾナ州のサプライズスタジアムは標高400m弱のところにあり、NPBの球場のどこよりも標高が高く1-5%程度の打球の伸びはあるでしょう。(コロラドデンバーでは10%近くも打球が伸びます。)この場合実際の飛距離は打球が135m実測で飛んだとして128~133mの飛距離となります。これだとスタンドに飛び込むかどうか際どい打球になりますね。これだけで打球が思ったより伸びた、の問題は解決しそうです。

 次に問題のきちんと捉えられた感覚は無かった方です。見てみると打球は非常に高い確度で上がっていき、最後は失速するように落ちてきてフェンスにあたっています。これは日本人との対戦がほとんどであったダルビッシュにとってほとんど未知の体験だったのではないでしょうか。あの高い角度で打球が上がってしかもスタンド付近まで持って行くことができる打者は日本にはほとんどいませんから。(かろうじて東京ドーム9回裏の阿部慎之助の打球くらい?笑)しかし、MLBの選手はアレが割と普通です。パワーヒッターに限らず高い弾道で迫撃砲みたいな本塁打が多く生まれます。今後ダルビッシュにしてみれば、あの手の打球は持ってかれることが多い、ということを気づき、(意識も含めた)修正が必要になるのかもしれません。

 逆にベナブルの言い分も考えてみます。ベナブルとしてみれば普段の自分のバッティングができたのではないでしょうか。だからこそあそこで「捉えられてない」なんて言われるとムッと来たんではないでしょうか。というか自分の会心の当たりを「全然ボール捉えられてないから」って言われたらそりゃ誰でも怒りますって。

 一般的にメジャーでやってる選手って遠くに飛ばすことを目標にしてることが多いですよね。アメリカが野球を「点を取る」スポーツとして認識している以上、マネーボールを含めたいかに「効率よく点を取る」か、に主眼を置いてなんらおかしくは無いです。そのためにはどんなバッティングフォームになるかというと、結局日本人には確率が低そうな(ピンポイントでしかボールを捉えられない)アッパーにしか見えないスイングになり、内野フライかと見間違うような高い弾道の本塁打を打つことを目標にしている訳です。

 まぁきちんと後ろの腕の肘を抜きつつ体の近いところでボールを捉え、最短距離でバットを出し、ヒットゾーンに長くバットをスイングさせていることは日本と何ら変わることが無いですが。しっかり体重を後ろの足に乗せて反り返るようなフォローになっています。これもすべて(巨人の小笠原が極端な例として)「全力でスイングしないとフェンスを越えない」日本人と、そうではないために、確率を上げ、手元で動くボールを体に近いポイントでボールを打つことができ、それでフェンスオーバーになる外国人選手との身体能力の違いと言っていいのではないでしょうか。

 さて、最後に通訳さんを通して話しているのは正式な国際会議と一緒で、必ずしも母国語ではない言語でしゃべると、特にプレスリリースのような正式な場では、ちょっとしたニュアンスの違いが大きな問題になってしまう可能性が大きく、それを防ぐためすよね。だから通訳さんにもしっかりと通訳(というか意図が伝わる意訳)をしてほしいですよね。通訳に頼らない方がいいことも、特にプライベートではありますが、プレスへの取材等へはしっかり通訳を通した方が良いと思います。