Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

Longoは本当にMVPを取れるような三塁手??

 さて、シーズンも始まって色々ありますが、、、中継ぎとか中継ぎとか中継ぎとか。。。じゃなくて、今月の月刊SLUGGER誌読んでたらLongoを相変わらず(?)ものすごい高評価してくれている様です。これ自体は非常に嬉しい事なのですが、本当に彼にはMVP候補となるような可能性があるのでしょうか。過去の成績を元に分析してみたいと思います。

 まずLongoについてちょっとおさらいをすると…身長6ft2int(188cm)、体重210lb(95kg)の非常に均整の取れた体付き。大学時代はCOLのTulowitzkiと同期で、彼にSSを譲り、3Bの選手になったというエピソードの持ち主です。TulowitzkiがMLBを代表するSSの一人となったところを見ると納得もできますね。Longoは実際に1試合だけMLBでもSSを守ったことがありますし、対左打者の引っ張り対策シフトの時はSSの位置に守り、5-5-3(踏むのはセカンドベース)等という併殺プレーを魅せる事があります。まぁゴールドグラブ受賞もあるし守備の評価はかなり高めです。と言うかやたらと軽快な守備と強肩を見せつけます。

 2006年にはドラフト1巡目(全体3位)でTBに指名され契約。同じ1巡目の上位にはルーク・ホッチェバーとグレッグ・レイノルズがいて、下位にはクレイトン・カーショウやティム・リンスカム、ダニエル・バード等がおります。現在ちょうど全盛期を迎えつつある年齢の選手が多いためかなり豪華なメンバーが揃っていますねー。下には。。。

 ちなみに彼は両親がメキシコ人であるためWBCメキシコ代表の資格も持っています。09年はアメリカ代表で選出されていますが。。。

 さて、これまでのLongoの成績をざっとまとめてみます。

  G PA H HR SB CS RBI BB SO Ave.

08 122 508 122 27 7 0 85 46 122 0.272

09 157 671 164 33 9 0 113 72 140 0.281

10 151 661 169 22 15 5 104 72 124 0.294

11 133 574 118 31 3 2 99 80 93 0.244

 デビューした08年からのざっとした成績をまとめてみました。やはり光るのは盗塁とその成功率。今でこそ通算82.9%と下がってはいますが、それでもかなり良い成績。最初の2年間は16盗塁で失敗0と数こそ多くないものの走塁・盗塁センスの高さを示しています。非常に有名な事ではありますがどうしてもこれは目立ってしまいます。さて、続いての注目は本塁打。一応主砲でパワーヒッターに数えてもいいLongoですが4年間で30HRをクリアしたのはわずかに2度。1年目はシーズンの3/4しか出場していませんが。どちらも35HRまでは届かず、10年は15盗塁46二塁打5三塁打22本塁打とまるで中距離打者。。。彼に40HRとかそういうのを期待するのは酷なのでしょうか。トロピカーナってやや本塁打出にくいところではありますしね。

 打率を見てみると.272→.281→.294と順調に伸びを見せていたのが.244と急降下。ただし10年と11年では10年が30打席に1本塁打であったのが11年は18.5打席に1本と長打力を含めたパワー面での伸びがあったため、やや荒くなったと考えられるのではないでしょうか。また、3割のクリアは一度も無いですが、大きなアッパーカット気味のスイングですから仕方ない面があると思いますし、彼自身も2分や3分の細かい率が彼に求められている事ではないことを自覚しているはずです。三振数も11年こそ打席数が減った関係で自身初の二桁でしたが、それ以前を見ればわかるとおり三振も多い、いわゆる長距離砲な感じです。

 旧来の指標で全体的に総合して考えると盗塁などで見えるとおり本来的には身体能力が高い打者で、その体をフルに使って打率こそ低い物の長距離砲としてどんどんスイングをして、長打を多く打つ。ただ本塁打はそこまで多い訳ではなく…というようなやや中途半端な感じが致します。彼の価値がどこにあるのかSABAR的な指標も見てみましょう。

  AVE OBP SLG OPS BB% K% BABIP WAR

08 0.272 0.343 0.531 0.874 9.1% 24.0% 0.309 5.5

09 0.281 0.364 0.526 0.889 10.7% 20.9% 0.313 7.6

10 0.294 0.372 0.507 0.879 10.9% 18.8% 0.336 7.6

11 0.244 0.355 0.495 0.850 13.9% 16.2% 0.239 6.1

 まずはこの辺りから。選球眼の良さを示すIsoDは.071~.111程度と割と良い値が出ています。これはLongoの選球眼の良さを示すと同時に主砲である彼を警戒して歩かせる、勝負を避ける、積極的な勝負をしない事を示しており、実際ぺーな先生のプロテクトがなくなった11年に最大のIsoD、BB%を示しています。また、年々BB%が上昇している事からも彼への警戒心の上昇を示していると考えられます。一方、長打力を示すIsoPは.213~.259と本来であれば2割後半~3割台欲しいと考えれば、本当の意味での長距離砲としてはやや物足りない成績がでています。

 次におもしろいデータはBB%が年々下降しているにも関わらずK%は上昇しています。つまりコンタクトの巧さが上昇しているということがわかるかと思いますが、これは非常に良い事実ですね。BABIPを見ればわかるように、本来はやや高めのBABIPが出ていて、11年の不調は主にBABIP的な不運であるのがわかりますが、K%を下げることにより自動的にBABIPに関わる打席が増え打率、延いては率関係のスタッツの上昇が見込めます。

 WARを見ると例年5を超える値が出ており、守備走塁面での貢献もあることを考えて非常に高い能力を示していることがわかります。11年も打率.244程度でWAR6.1は非常に良い結果が出ていると考える事ができるでしょう。

 続いてこのようなデータを見てみます。

  LD% FB% GB% IFFB% HR/FB GB/FB

08 19.8% 41.6% 38.6% 9.4% 19.4% 0.93

09 19.1% 41.8% 39.1% 3.2% 17.6% 0.94

10 20.3% 43.1% 36.6% 7.1% 11.1% 0.85

11 18.0% 44.7% 37.3% 10.8% 17.6% 0.84

 これを見ると大体18-20%と理想よりやや低めのLD%、年々FB%が高くなってきていて、FB%が40%強、逆にGB%は30%台となってるのがわかります。フライ系に傾いている打者であることが確認でき、長距離砲にふさわしいバランスの割合ではないでしょうか。ゴロで本塁打にはできません。。。そして年々フライの割合も増えているので、今後はやや本塁打の上昇が見込めるかもしれません。内野フライはまぁ置いときましょう。これは上下動が多いけど少ない方が本当は良さげです。最後にHRになるかどうかの鍵を握るのがHR/FB。08年にキャリアハイの19.4%を記録し、その後は毎年10%を超えています。注目はなんと言っても10年。打率.294、22HR、15盗塁、46二塁打という中距離打者の様な成績を残した年ですが、キャリア唯一のLD20%超、キャリアで最も低い数字が出ているGB%36.6%、HR/FBもキャリア最低の11.1%と通常値よりも6%以上低い数値。BABIPは.336とキャリアハイ。この年だけは長距離砲ではない様な数値が出ていて先述したとおり、やはり中距離打者であり、この傾向がまた出てきたら主砲としての能力をフルに発揮しているとは言えなくなるかもしれません。

 結論として、今のままではやや厳しいという感じではないでしょうか。ここまでは何も記述していませんが、健康面の問題も持っています。今まで右手薬指の感染症だとか太腿だとか怪我・病気が多くフルシーズン活躍しているのも2シーズンでしかありませんし、今年もSTで死球をもらって一時離脱するなど結構ひ弱なところがあります。成績では、いかんせん三振数が多く、これが確実性、延いては率関係のスタッツの上昇を阻害しているからで、さらに年間40本を超えるパワーも今までの感じではちょっと厳しいと思われます。こちらの積み上げ系スタッツは健康面での障害もありますしね。当然打席数に多く立つほど有利なものですから。そしてもう27歳ですが、これ以上の劇的な成長は見られないのではないでしょうか。少なくともTBにいる限りは。

 まぁやや悲観的な私ですが、想定される成績を計算してみます。目標は「(ミゲル・カブレラやプーホルス辺りを打ち破って)MVPが取れそうな成績」とします。

 まず現実的な成績の予想。試合数を145(17試合欠場)、630打席に立つ事とします。やや控えめですが軽微な怪我が1度という想定です。BABIP.310とします。これは.239だった昨年を除いて3年間中2度クリアしているので不自然な値ではありません。 K%は18%。最近やや減少傾向にある物をそのまま当てはめて見ます。80BB(BB%12.7%)。ちょっと高めのBB%になりますが逆にこれは最近四死球を選べるようになってきた物を反映させました。そして2B数を増やして、HRは長距離砲として30HRは欲しい、ということで、2B45、HR30という数字を想定します。2Bは2010年の46本を基準にしました。なお、犠打・犠飛・相手のエラーの出塁等は考慮に入れていません。サンプルも少ないですしね。

G145 PA630 AB550 H156 K114 BB80 2B45 3B1 HR30

.284/.375/.533 OPS.907 

BABIP.310

 という成績となりました。これをMVPとしたいでしょうか。それもプーホルスやバティスタ、ミゲル・カブレラにハミルトン、BOSやNYYの面々…。いくらTBをPOに導いたとしてもやや厳しいのではないでしょうか。少なくともMVPの候補の一人だとしても本命にはなりませんよね。。。それでもOPS.907は自己最高の成績となります。これは長打の数(特に二塁打)を大幅に増加させたのが原因となりそうです。

 やはり課題となるのは三振の数。BABIPを従来通りにしているので、三振を減らす=率関係のスタッツの上昇となる訳ではあります。

 ということで、三振を減らす方向で別な計算をしてみます。しかし三振を減らす事で長打も四球も減ってしまう、という方向で初期値を設定してみます。

BABIP.310、BB%10%、K%11%、28HR、3B1、2B38。

これを初期値とします。

なお、試合数、打席数は前回同様145試合630打数のまま、動かさないことにします。

その結果は

G145 PA630 AB567 H174 K69 BB63 2B38 3B1 HR28

.307/.376/.526 OPS.902

(BABIP..311、BB%10.0%、K%11.0%)

 打率は自身初の3割クリアとなりました。しかし、やはりどれもう~ん…と首をひねる様な成績です。実際OPS自体は上とほとんど変化がない、というか微減ですし、30HRをクリアしてないと主砲としても…ねぇという印象ですね。

 これでは中々MVPに届かないでしょう。MVPを取るには、本人が好調でもあり、なおかつ運が良いというのも条件になってくるでしょう。なので、次の想定では、Longoが好調であり、かつBABIPが高い状況を想定してみます。具体的にはBABIP.350付近を基準にしてみたいと思います。これくらいであれば実際に起こりえる数字ではないでしょうか。

BABIP.350、BB%13%、K%16%、30HR、3B1、2B40。

 これを初期値として計算をしてみましょう。また、試合数、打席数は145試合630打席で動かさない事とします。

G145 PA630 AB548 H176 K101 BB82 2B40 3B1 HR30

.321/.410/.562 OPS.972

(BABIP.350、BB%13.0%、K%16.0%)

 かなり良い値が出てきました。というかほとんど首位打者を取るような成績となっていますね。。。本来的にはそういった打者ではないのですが。。。こうなるとほとんど中距離打者というかなんというか…(笑)ちょっとそぐわない感じではありますがこれなら少しMVPに近くなったかな、と思います。最もそれでもプーホルスやBautistaらと勝負になるのかと言うと…やや心配ですよね。

 積み上げ系のスタッツをもう少し強化したいと、そうすればよりいっそうプーホルスと戦える成績になるのではないかと。

 という訳で次の計算では

1. Longoが健康で1年間を過ごす(→160試合出場、680打席とする)

2. Longo自身が好調を維持する(→本塁打率は昨年同様とし、打席数が増えるので37本)

3. Longoに幸運が向いてくる(→BABIP.350)

4. Longoが警戒されるため四球数が増える(→IsoD.100ほどになるように調整…BB%15%)

5. 長打が増え三振数が増える(→K%19%)

というifを入れまくりの状況で計算をしてみます。

 初期値は以下の通りです。

PA680、BABIP.350、BB%15%、K%19%、HR37、3B1、2B40

 で、早速結果です。

G160 PA680 AB578 H181 K130 BB102 2B40 3B1 HR37

.313/.416/.578 OPS.994

(BABIP.350、BB%15.0%、K%19.1%)

 さて、これならいかがでしょうか。ようやくMVPにふさわしい成績なのではないでしょうか。もっともこれも例えばプーホルスやカブレラがOPS1.000をクリアしてチームをPOへ導き、タイトルをいくつか獲得してしまったら無理そうですし、Bautistaが化け物な成績出したらやっぱり難しいと思いますね。ぅーん。。。やっぱり難しい。まぁMVPってリーグで最も価値がある選手を選び出す賞(直訳)なので獲得が難しいのは当然なのですが。三振の数が多いとどうにも難しいでしょうね。ま、とは言え、Longoは守備面、リーダーシップ等を考えて見てもLongoはTBの至宝であることは変わらないので、今後もしっかりと活躍を続けて欲しいものです。

 今回は試験的に単純な数式を組み合わせて成績予想をしてみましたが、いかがだったでしょうか。。。一度作ってしまうとそれを再利用するのは簡単なので今後も使っていくかもです。

 最後に本気で初期値を考えたリアルなLongoの予測値をお見せしたいと思います。

G145 PA630 AB554 H152 K139 BB76 2B37 3B3 HR31

.274/.362/.520 OPS.882

(BABIP.315、BB%12.1%、K%22.1%)

ちょっと、ぽい値が出ていますよね。