Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

もっとも効率よく野手を打ち取る投手? その2

 以前作った新指標Pitch/Out(P/O)に関しての議論の続きとなります。以前の記事を読まれている前提で進めますので読んでない方は以下のリンクから以前の記事をご確認ください。

・もっともアウトがとりにくい打者は誰?

・もっとも効率よく野手を打ち取る投手??

 さて、以前の記事では、P/O、つまりより少ない球数でアウトを取るためにはK/9、BB/9を低く抑えた投球スタイルの上でかつ、BABIPが低いことを条件に挙げました。

 その中で、じゃあ防御率やGB/FBと比べたらどうだ、というご指摘を頂きました。確かに一つの(しかも新しい)指標をきちんと理解する上で、既存の様々な指標と比較することは最初の重要なステップでしょう。

 今回は散布図とその近似曲線を用いることによってさまざまな指標との比較を行い、実際にP/Oというのは(特に投手にとって)どういった特性をもった指標なのかを考えてみたいと思います。

 まずはこの表です。今回比較を行った指標のデータです。長いし見にくいなんて思われた方は飛ばしてください。

 今回はここにあるとおり、K/9、BB/9、HR/9、ERA、FIP、xFIP、BABIP、GB/FB、OBPOPSの10の指標とP/Oの相関性を調べてみました。面倒なのでざっと並べてしまいます。ちなみに全てのグラフで横軸がP/O、縦軸がそれぞれの指標となっています。

 ご覧の通り全くと言っていいほど無関係、相関のない指標が多数並んでいます。かろうじて相関があった指標がBB/9。この指標に関しては0.74とそれなりに相関性があることが見て取れます。また、それよりは弱い形でOBPとの相関があるようにも思えます。しかしながら、期待されたK/9やxFIP、BABIP、GB/FBとは全くと言ってよいほど、相関性が無かったことがわかります。

 ここからわかることは一つあります。それは与四球が予想以上に球数が制限されている投手に対してはダメージを与える物であるということです。そりゃあ最低でも4球も投げてアウトをとれないんですから、アウトをとるという目的からはもっとも離れた行為であるのは疑いようがない事実なのですが…。

 また、示したグラフがことごとく「極めて緩やかながらも一応正の相関を示す」ことをきちんと見ると、一定の法則はあるのかもしれませんが、サンプル数が少ないのか、あるいはそれ以外のノイズがきわめて大きく、そのためP/Oを押し下げる行為が必ずしも好投手とする条件とは言えないのではないかと考えられます。上位陣の顔ぶれを見ればそれもわかりますよね。

 では、P/Oとはいったいどのような指標なのでしょうか。以下のグラフを見てください。

 見ての通り、P/Oを0.1刻みで人数を積み上げた棒グラフです。きちんと数式から調べた訳では無いのですが、パッと見非常に美しい正規分布のグラフになっています。この美しさは主に「投手の運」を表すことでお馴染みのBABIPの分布とも比較できるほどの美しさです。

 つまり何が言いたいかというと、投手のP/Oは確かにBB/9と緩やかな相関関係にありつつも、基本的にはある種の「運要素」ではないかと考えられます。しかもBABIPとも独立しているため、別に被打率、ひいては失点の多寡にも関係があまり見受けられない、そのためこれが良いとか悪いとかということを論じることがイマイチ意味があるとは言えない指標なのではないかと思います。ご贔屓いただいた皆様、ご期待に副えなくて申し訳なく思います。

 とはいえ、今のところ調べたのは1年間の経過だけですので、今後は過去にさかのぼって傾向を調べることと、投手のP/Oの隔年ごとの移り変わりを調べる必要があるかと思います。つまりP/Oが本当に運要素なのか、それともP/Oが良い投手は高いレベルで維持できているのか(またはその逆)、を調べる、ということですね。まだまだこの指標も突き詰める要素がたくさん残っているように思えます。

 なお、予告だけしておきますが、打者のP/Oに関しては「運」以外に結構「実力」も絡んでいることが多そうです。現在これも過去にさかのぼって調査中です。ちなみにここ数年で最も打ち取りやすい打者はY.Betancourtであることは間違いなさそうです。07年(4.56)と09年(4.53)は規定打席以上でワースト2位、08年(4.46)、10年(4.43)、11年(4.29)はワーストと安定して低い数字を残してくれています。