Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

もっともアウトがとりにくい打者は誰?その3 投高打低は統一球のせい?解答編

 さて、前回の続きになり、また一連のP/Oの議論の続きになります。以前の記事を読まれている前提で進めますので読んでない方は以下のリンクから以前の記事をご確認ください。

・もっともアウトがとりにくい打者は誰?

・もっとも効率よく野手を打ち取る投手??

・もっとも効率よく野手を打ち取る投手? その2

・もっとも効率よく野手を打ち取る投手は?その3 救援投手は球数なんか数えちゃいない

・もっともアウトがとりにくい打者は誰?その2 投高打低は統一球のせい?

 さて、前回は打者のP/Oが正規分布に近い分布をしていることを示しました。あまりにも長い表を使ってしまったので読みにくかったかと思います。今日は本項の本題に入って行きたいと思います。

 今までの表を良く見てみると気付くかもしれませんが、はっきり言って0.1刻みのヒストグラムではノイズが大きくてきちんと分析できないですから0.5刻みに変更してみましょう。

 いかがでしょうか。これだとかなりはっきりした傾向が見て取れます。同様にこれを前3年、後ろ3年で分けた物を作ってみます。

 ここまでくるともはや誰がどう見てもはっきりした傾向があることがわかります。そう。2009年と10年を境に大きく数字が低下しているのです。

 度数分布表を見るとよりはっきりします。

 明らかに6.5-7.5といった高い次元の成績を残している人が減っている、それどころかほぼ半減している、ということが言えるでしょう。今度は逆にそれぞれのP/Oの数字を残した人の数の変化を年度ごとに比べてみます。これも0.5刻みに加え、さらに1.0刻みも付け加えてみます。

 いかがでしょうか。明確に上位陣の人数が減って、真ん中付近の5点台の選手が増加しているのがわかるでしょう。

 近年、MLBでは全体的に投高打低の傾向がある、ということが論じられています。その主な根拠となるのが、防御率等の数値の低下もありますけれども極端に増加したノーヒッターの数とされています。

 以下に07年以降のノーヒッターをまとめてみます。

 投手のノーヒッター

07年

4/18 Buehrle(←スペルが難しい)

6/12 Verlander

9/1 Buchholz

08年

5/19 Lester

9/14 Zambrano

09年

7/10 Jonathan Sanchez

7/23 Buehrle(Perfect) TB

10年

4/17 Jimenes

5/9 Braden(Perfect) TB

5/29 Halladay(Perfect)

6/29 Edwin Jackson TB

7/26 Garza TB

10/6 Halladay(PO)

11年

5/3 Liriano

5/7 Verlander

7/27 Ervin Santana(1失点)

12年

4/21 Humber(Perfect)

5/2 Weaver

6/1 Johan Santana

6/9 Millwood 他

6/13 Cain(Perfect)

8/15 Felix Hernandez(Perfect) TB

9/28 Bailey

 07-09年は7回のノーヒッターが記録されておりましたが、10年に6回も記録されると3年間で合計16回も達成されています。そのうちTBがされたのが3度のパーフェクトを含めて4回もあるのが気に食わないですが、それは仕方がないとして。確かに回数は急増しています。

 その投手の年、であることを裏付けるようにP/Oが低下していることがわかります。平均値を見てもちょっとずつ下がっていることがわかるのですがそれ以上に上位陣の人数の減少が大きく見えます。その分、6.5を超えるP/Oを記録する事には価値が高まっていることがわかりますし、8.07を記録した昨年のVottoがいかに怪物的な打者であったかが良くわかる結果ですね。

 P/Oの本質的な議論とは少し違った結果に落ち着きましたが、結果としてP/OがMLB全体が投手有利に傾いていることを示した指標であることが確認でき、また10年以降、MLBの投手有利になっていること自体も再確認することが出来ました。

 今後はより議論を深めるために、打者個人ごとの成績の変化を追っていきたいと考えています。また、各指標との相関の有無を調べられれば、より本質的なところが追えると思います。

 ちなみにこの投手の時代、打者が薬に手を出さなくなったのが大きな原因、なんて言われていますが、本当のところは全くわからない、というのが事実でしょう。。。

☆本日のおまけ

 日本でSABRが広がるのは非常に嬉しいのですが、やはりSABRの本質というか…深くまではなかなか理解してもらえてないような気がします。例えばWHIPやOPSといった指標が最近は広く使われつつありますが、WHIPやOPSは「あくまで結果」であって「今後を予測する」ための指標としては弱い、ということが言えます。そのためにさらにFIP(投手の実力を表そうとした疑似防御率)やBABIP(不完全ながらも運の要素をはかる指標)、なんかがある訳です。一発病がある、という言い方ではなく、GB/FBでフライボール系の投手である、と言えば原因究明ができます。今年は被本塁打が多い、という言い方ではなくHR/FBが30%を超えていて明らかに不運と位置づけられる被本塁打の多さだ、と言えば原因究明になるのではないでしょうか。そういったことを考えながら見ることが出来るのも野球の良さの一つですよね。見方は人それぞれですが、もし今後の予測やなんかをしたいなら、そういったきちんとした理由を示してもらえるとデータ屋さんは嬉しいんです。

☆本日のおまけ その2

 LongoとジェニがRed Hot Zone突入の模様です。この二人がホットラインを作るとTBは得点力がものすごく上がるでしょう。それにしても6番指名打者Jose Molinaって…