Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

福留って言われるほど成績が悪かったのか?

WS出場チームが決定しましたね。個人的にはあまり面白くない組み合わせになりましたが、試合自体は白熱した熱戦が見れそうな好カードになりました。やはり運やここ一番でのクラッチを引き寄せる力を持ったチームというのはどこか数字では表しきれない秘密がありそうです。

 そういうPOを尻目に、本ブログはまたしても数字で選手を見ていこうと思います。今日のターゲットは福留と青木。MLBでは期待外れに終わったと言っても良く、さらに日本に帰ってきても鳴かず飛ばずだった福留と、期待以上の結果を残している青木を比較してみようと思います。

 ところで鳥谷がMLB移籍も視野、とのことですね。NPBの日本人内野手では一番良い選手だと個人的には思っているので、特に二遊間が弱い球団やけが人の事情等からサードも含めて120-150試合くらいユーティリティーを起用したい球団などは$2M/年の2年契約程度であれば獲得しても悪くないと思います。というのも彼の出塁能力は日本人の中では群を抜いているからです。また、守備範囲も日本人ではかなり広い方に入りますのでレギュラーは厳しいにしても時々ショートくらいは何とかできるのではないかとも思います。甲子園で天然芝に慣れているというのも他の日本人には少ないアドバンテージでしょう。それ以上にチームへの貢献という意識は非常に高いですから下位打線でいやらしいことができると思います。是非、メジャーリーガー鳥谷が見てみたいです。

 という訳で福留と青木の話です(強引に戻す)。彼らの成績を比較して、ではいったいどうして福留が期待外れだったのかを考えてみたいと思います。

 何はともあれ、一先ず数字を見てから考えてみましょう。

 ここまで2年間MLBでプレーした青木と、福留の最初の2年を見比べてみるとまずまず両者ともほぼレギュラーの枠を確保していたことがわかる打席数、出場試合数です。パワーはほぼ同等、盗塁は青木の方が明確に多く、青木の方がスピードを武器にできていることがうかがえます。また青木は三振数が少なく、その分四球数も少ないですが、今年は四球数が三振数を上回るなど、成長を見せています。

 続いて率関係のスタッツを見てみます。

 打率に関しては青木の方が高い数字が出ていますが、長打率はほぼ同等の数字、出塁率に関しては明確に福留の方が上ということが言えます。つまり、パワーでも出塁能力、つまりアウトにならない能力でも青木を上回っている数字を残せていると言えるでしょう。というか福留の出塁率IsoDMLBでもそれなり以上に高い数字です。

 この数字を見ると二人の対比がくっきりとなされ非常に面白いと思います。完全に球をじっくり見るタイプの福留と好球必打、でもボール球には手を出さない青木、というのがわかります。面白いのは福留のP/PAとP/O(←これに関してはリンク参照)の対比です。P/PAは常時4を超えていてこれはMLBでも基準となる数字です。ところがP/Oは青木にこそ負けてはいませんが、一度も5.5をクリアできず、平均よりも下、という数字が出ています。

 xBABIPとの比較を見てみると運の要素はお互いトントンといったところでしょう。ややLD%FB%が高い福留の方が高めのBABIPを出せる傾向にあるかもしれませんが、いずれにしても20%を常時マークするのは厳しい数字が並んでいます。パワーは福留の方があることがここからもわかります。

 さらに一歩SABR系の貢献度を見てみると今度はほぼ同等ながら福留よりも青木の方がやや貢献度が高いという数字が出ています。守備や走塁のわずかなアドバンテージがそのままわずかな青木の優位と言えるかもしれません。

 数字からわかることの結論としては、アウトになりにくさや攻撃力で見ると福留の方が優勢、それ以外はわずかに青木が優勢で、SABR的にもほぼ同等程度、となります。攻撃力が福留の方がはっきりと上と言い切れますので、ますます福留が失敗例の様に扱われることに違和感を持ちます。その理由は以下の通りではないかと想像します。

・福留は曲がりなりにもパワーヒッター扱いという触れ込みで渡米したのに対して、青木は完全にチャンスメーカータイプとして渡米した。

・青木は年俸$2M/年と期待値が低かったのに対して福留は$12M/年と期待値が高かった。

・福留は毎年4月に調子が良く、期待をさせるものの、その後竜頭蛇尾だったため、「期待を裏切った」感覚が残り続けた。

・青木は(統一球の影響もあったが)渡米直前よりも成績が向上したが、福留は下落した。

・福留はパッと見は攻撃での貢献はあるように見えるが実はP/Oが悪いなど「感覚的」にイマイチな印象を残した。

 いずれも使い古された議論ではありますが、これらが理由となって福留がまるで全く成績を残せなかった、という印象になっていると思われます。特に年俸の問題さえなければ、大きく期待さえしなければ、MLBでも一定の評価を得られたと思います。しかし、年12Mという高額な年俸やイチローと松井のハイブリッドタイプなどと大きく宣伝されてしまったために看板倒れになってしまったように見えたのでしょう。逆に日本人選手バブルがはじけた後に渡米した青木には思ったより活躍してくれたな、というところから好印象につながっていると言えるでしょう(もちろん青木の成績だって立派だからですが)。

 実際に確かめないとわからないことはたくさんありますね、世の中。ちなみに鳥谷は…福留くらい成績が残せれば上出来だと思います。