Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

【連載 第11回】打者の運と実力を探る ~結局運なのか~

 本稿は連載をしているひとつながりの記事です。 過去記事についてはリンク先からご確認ください。

[第13項:結局運なのか]

 さて、引き続き球場の影響が及ぼす運について考えてみます。前項まではホーム/アウェーでの運の差を投打(=ホームの打者/アウェーの打者)で考えていました。が、各チームの打者なら打者、投手なら投手のxBABIPを見ていくと、多かれ少なかれホームでLuckが悪い時はアウェーでも悪く、ホームでも良い時はアウェーでも良い傾向があるように見えてきました。気になったところなので、これを球団ごとの散布図を作成してみました。これを地区ごとに見ていきます。

 グラフはいずれも横軸にホームでのLuck、縦軸にアウェーでのLuckとなります。例によって投手のLuckはひっくり返しなのですが、比較の容易さを優先し、そのままとします。

 グラフの第一象限はホームでもアウェーでも幸運、第三象限がホームでもアウェーでも不運となります。第二象限はホームでは不運、アウェーでは幸運な「投手優位な球場」に、第四象限がホームでは幸運、アウェーでは不運な「打者優位な球場」に近いイメージととらえられます。ただし、この表の点ひとつが1年分のサンプルを表しているため、当然ブレが大きく、球場特性をきちんと示している訳ではないことを理解してください。

 また、このグラフで第一象限・第三象限に多くのサンプルが集まっていた場合は投手・打者の編成の都合上、幸運あるいは不運な選手が多く、逆に第二象限・第四象限に多く集まっていた場合は選手の運要素以上に球場特性が大きく影響していることを示していると言えるでしょう。

 まずはALEから見ていきましょう。上が打者、下が投手となります。

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 まず全体的に第四象限のサンプル数が多くなっています。これは投打問わず各地区で見られる傾向です。xBABIPの限界かもしれませんが、不運に集まりやすい傾向があるように思えます。

 これを見ると明らかに1チームおかしい分布になっている球団があります。第一級の打者優位の球場であるBOSは確かにホームでの幸運が強く出ているようにも思えます。投手に関してはそこまでではないですが、それでもやや右下よりの傾向があるようにも見えます。

 また、TBは投手陣がホーム・アウェー問わず良い感じに幸運に恵まれています。07年のめちゃくちゃな不運以外はかなり幸運なのがわかると思います。それでも06年以前は大敗に次ぐ大敗だったのですが。

 続いてALCを見てみましょう。

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 特段言うことはありません。投打ともにホーム・アウェー問わずCWSが不運方向に振れているのが気になります。ホームだけであれば、不運な球場とか言えるのですが、ホーム・アウェー問わないので、むしろ編成で不運な選手が多くいると言えるのではないかと思います。

 ALWに移ります。

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 何となくではありますが、OAKが投手より、TEXとHOUが打者よりの球場特性があるようにも思えないでもないです。とはいえそれは強いものではないとも言える内容です。OAKの散布はTBの様に全体的にマイナスが強く出ているようにも見えます。この地区は綺麗に左下から右上へのグラフとなっていますね。チーム編成による運不運の方が、

球場特性を上回る結果を残している証左ともなります。SEAが投手優位だなんてのは、少なくとも安打の出やすさに関しては幻想でしかないということがわかりますね。

 NLに行きましょう。まずは東地区から。

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 まずこの地区に文句を言いたいのは、同じような色の系統のチームを同じ地区にまとめないで欲しいということ。プロットする色をそれぞれなんとなくチームカラーに近づくようにしているのですが、この地区はさすがに酷い。暖色系しかいませんから。MIAまでオレンジになりましたからね。前のユニの方がかっこよかったのに。それ以外は特段言うことはないですかね。MIAが前球場、新球場関わらずかなり散らばっているのが気になると言えば気になります。とはいえ、ここのチーム編成はちょっと特殊なので、そういう事情が絡んでくる可能性はありますね。

 続いてNLC

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 特段言うことはありませんね。全体的にアウェーよりもホームで投手がマイナス(幸運)方向に寄っているのが気になる点です。PITとSTLが大きく関わっていると思いますが、この2チームはやや投手よりの球場を持っているでしょう。ただそれ以上にチーム編成に影響を受けている様子なのは変わりません。

 最後はNLWとなります。

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 ここはかなり面白い傾向がある地区です。まずは天下の打者優位球場を本拠地としているCOLはデータでもそれを裏付ける形になっております。一方で、打者不利なPetcoが本拠地のSDはそれを裏付けるデータも出ています。LADは予想通り、球場の影響以上に編成が関わってきていることが分かります。さらにSFは投手はかなりマイナス値(=幸運)を示している一方、打者は極々普通となっていて、これはSFの投手編成がかなりうまくいっていることを示していると言えます。

 不思議なのがAZでして、打者を見るとホームが打者優位な形に、投手を見るとホームが投手優位な形と不条理なのか、それともアウェーでめちゃくちゃ弱いのかわかりませんが、とにかく不思議な形状を示しています。これは唯一の形なのではないでしょうか。

[第14項:結局個人の能力に紐づく運と本当の運不運なのではないか]

 結論として散布図からわかるとおり、かなり極端な球場特性を持つ球場(Petco、Fenwey、Coors)以外は球場による運不運以上に選手編成による運不運の方が大きく影響することがわかりました。選手編成による運と言う意味では、やはり幸運な選手を多く集める、あるいは不運な選手を集めない、という方向性になるのかと思います。現実問題として、幸運あるいは不運が続く選手がいる訳であり、その中でも幸運を維持できる選手を多く集めることができるでしょう。

 ただし、この幸運も不確実な要素であり、かなりの振れ幅を持ちます。平均してみると幸運な選手でも単年度では不運になる可能性もありますから、難しいところです。そのため、一時的に不運になった打者が幸運に戻る可能性に賭けて選手を獲得するTBの様な球団もあります。

[第15項:たまたま幸運が続いただけ?それとも実力?]

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 以前も使ったグラフですが、便利なので再掲します。イチローのBABIP、xBABIP、Luckの偏差値の推移を見たグラフです。ご存知のとおり11年以降イチローの打率は急降下しました。これを見るとLuckの値が急激に下落しおり、それに引きずられる形でBABIPも下がっています。

 これについて、運が悪い打者になってしまった=実力として持っている運が悪くなったと解釈をすることができます。一方で単純にこれまで幸運だったものの、その幸運が逃げて行ったと解釈することも可能です。

 これがどちらなのかは意見が分かれるところでしょうし、どちらが本当かは言えません。いずれにせよ因果律的なこじつけに終始するでしょうから、ここでは結論は出しませんが、一個人レベルのサンプル数ではとてもじゃないですが統計学的な分散の範囲内です。つまり、これが単純に強運だったともいえる訳です。

 一定数いる幸運打者をすべて運だけで語るのは変ですし、今後の予測を困難にするので、今後、もう少し探っていこうと思います。

 なお、イチローのBABIPは2014年.346と復活し、xBABIP.343に対して+0.003を記録しました。それでも打率は3割に届いてない以上、彼のキャリアの終焉が近いことを物語っていると感じます。