Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

【連載 第16回】打者の運と実力を探る 最終章 ~xBABIPの改良~

 本稿は連載をしているひとつながりの記事です。 過去記事についてはリンク先からご確認ください。

[第三項:xBABIPの改良に取り組む]

 前回の続きとなりますが、ここから新しい方法に取り組んで行こうと考えています。今回はまずFangraphsのBatted Ballで最近(ここ1年くらい?)で公開された、打球速度のBABIPに与える影響についてを調べてみます。Batted Ballでは低速(Soft)、中速(Med)、高速(Hard)と打球速度を分類し、各打者のその割合を公開するようになりました。当初は直近1年のみだったのですが、現在はBatted Ballすべて(02年以降)を公開しています。ただし、まだこれのBABIPは公開されている物だけでは計算できない(Splitsで打球速度を選択できない)ので、一先ず傾向として速度によるxBABIPの計算が可能かどうかを見てみましょう。

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 これは実際に記録したBABIPとの比較になっています。規程打数以上の打者を02-14年まで全員分を散布図にしました。とかくサンプル数の足りない単年度ごとの区切りではありますが、まずはプロットしてみました。

 これを見ると、明らかに何らかの法則性を言うことが困難だと考えられます。一応Softはマイナス、Hardがプラス、そしてMedが±0と綺麗な数字を示しているのですが、いかんせん分散が大きすぎて相関係数も無相関とも言えるだけの数字となっています。

 ここから、とりあえず現状、この打球速度から新しいxBABIPを作ることは不可能だとし、この手を放棄することとします。個人的には出来ると思ったんですよね。打球速度が速ければ、安打も出やすい的な。

 ちなみに打球タイプから見るとこんな感じです。

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 駄目に見えますが、少なくとも肉眼で確認できるレベルでLD%やFB%はBABIPへの寄与がうかがえます。

 ちなみに打球速度はここに大きな影響を与えていました。

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 高速な打球とHR/FBの相関。これは紛れもなく十分に相関があるといえるでしょう。もっとも当たり前ですけどね…良い当たりが多ければフライに対する本塁打の割合も増えるということは。

 これを見れば何らかの相関を得ることは不可能ではなさそうですから、今後より精査が必要になるでしょうね。打球速度についても。

[第四項:xBABIPの改良]

 前項のとおり、打球速度での新しいxBABIPを作出することは困難でしたので、従来通りの方向性でxBABIPを改良してみたいと思います。

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 前回も使ったグラフですが、これを見ると明らかにxBABIPはBABIPよりも高めで出てしまっている傾向が見受けられます。これを是正する方向で進めましょう。つまりLD%の想定されるBABIP.73、GB%の.24、FB%の.15を修正していく方向です。

 これは案外簡単なことでして、単純に毎年の各打球傾向のBABIPを求めて、式を組んでしまえば、期間中の平均的なxBABIPが求められるのです。これは従来のxBABIPと全く同一の方法です。従来型は04年版のxBABIPだったように記憶していますが、かなり数字のずれがあることは否めません。これについては想像でしかないですが、おそらく犠牲フライやファールフライの扱いによる問題なのではないかと想像します。

 以上より02-14年期間中のxBABIPを新しく求めてみました。仮にxBABIP’02-‘14とします。

 xBABIP’02-‘14=0.709LD%+0.129FB%+0.232*GB%

 これで計算すると実は今までの式から比べるとほぼ0.015下がった数字(正確には0.015137~0.015371の差)になります。これを以前のグラフに落とし込んでみるとこんな感じになります。

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 ほぼ現実のBABIPに即した形になったことが伺えます(ただし、現実のBABIPよりもxBABIPの方が数字が「暴れる」のは変わらない)。

 最後に各年度のxBABIPを掲載します。但し1年間程度ではサンプル数が足りないため、信頼性に欠けることはご承知おきください。今後は必要に応じてここから加工したxBABIPを使用していこうと思います。

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[第五項:連載の終わり]

 と言う訳で、本連載の本編はここまでとします。次回、余談を1つ記載して本当の終了としましょう。

 ここまで書いてきて予想外の長期連載となってしまい、その上、狙っていた成果を得ることは敵いませんでした。それでも多くの数字を扱っての検証は私個人にとっては非常にためになることでした。今後もこのスタンスを崩さず、如何に選手個人の実力を客観的に把握できるか、如何に運の要素と実力の要素を切り離すか、と言うテーマを興味を持った内容について調べて、掲載していきたいと思います。

 また、このような「書いている者が一方的に楽しいだけの文章」に対して支持するボタンやコメントを含めて読んでいただいた皆様、特に最初から最後まで支持をしてくださった5名くらいの方々に感謝いたします。途中で心が折れそうになったこともありましたが、何とか終わりまで持って来ることができました。こんな読みにくくてわかりにくいブログではありますが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

 …さて、最後の余談の本分を書きましょう。8月中のアップは…できるかなぁ。。。