Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

Ichiro 3,000本安打記念記事 今のスタイルで成功するまで3年以上かかった

 Ichiroがとうとう通算3,000本安打に到達しました。私は彼のMLBデビューをきっかけにMLBを本格的に見るようになった口ですから、そんな彼が3,000本到達ということで、それだけ時間が経ったのだなぁと感慨深いものがあります。素晴らしい記録ですし、心からおめでとうと言いたいです。

 そんな訳でですね、予告した通りIchiro3,000本安打記念記事をアップする訳ですよ。前々から準備してたのさー。あ、少々遅くなったのはFGやBRの更新が遅かったからと言い訳しておきます(笑)

 で、どうせまたIchiroおめでとう記事があふれて、この弱小ブログのマニアックな記事なんかは埋もれてしまうこと請け合いですから(笑)だったら気合いを入れて、他の記事には無い視点での記事を書いてみようと思うのです。ちなみに参考記事としてこちらを貼っておきますね

 さて、とりあえずはここまでの彼の記録を振り返ってみましょう。

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 改めて言うことは無いですが、01年にデビューして以来ほぼ欠場なく試合に出続けていた選手です。10年までの連続200安打はとんでもない記録です。また、相変わらず盗塁する能力にも長けていて、それも通算500盗塁を記録しながらも盗塁成功率の高さを維持しているのはさすがですし、その能力もデビュー当初は15盗塁死(成功率80%)、14盗塁死(67.3%)と多めだったのですが、それ以降は修正し、盗塁死がほとんどない選手になりました。

□02

 リードオフマンですから打点は少なくて当然です。それでも16年かけて750まで積み重なってきました。四球数が少ないという批評はありますが、彼は高打率と高BABIPから来る高出塁率を残すタイプですから問題はありません。wOBAがきちんと高い数字になっています。全盛期の彼(とJ-Roll)が15年のKCにいたらセイバー黎明期とは違う新しいタイプの選手としての評価につながっていたでしょうし、そんなんじゃなくてもパワー重視のMLBの中でさわやかな一陣の風のようにプレーしていたIchiroは十分にMLBの歴史でもエポックメイキングな存在です。

□03

 先にも言いましたが、全盛期(01-10年くらい)Ichiroはリードオフとしては十分すぎるほどの出塁率がありした。実際毎年安定して.370前後、悪い年で.350をマークするリードオフがどれくらい世の中にいるでしょうか。長打の少ないリードオフタイプでこれは十分すぎる成績ですよ。これだけを見れば彼は最大瞬間風速よりも毎年の安定感が売りの打者だと言える感じです。それでシーズン歴代最多安打だのMVPだのとってるんだから世話無いっス(笑)正真正銘の化け物クラスだと言えるでしょう。

□04

 ちなみに彼のBABIPの高さを足の速さで説明することが非常に多いのですが、それだけではありません。彼は基本的にはLD%が高く、また不用意に打ち上げるようなことが少ない打者です。なので、もちろん内野安打を稼ぐことでBABIPにプラスαをもたらしているのは事実ですが、根本的にBABIPの基礎値が高い打者であるのです。もっとも安打になりにくいフライが少なく、ライナーが多く、そして徹底的に転がすことで安打を稼いでいるのです。アヘ単などと言うのは大きな誤解の一つです。それにどんな安打だろうが安打は安打ですし。

 ちなみに彼は今年は確かに高いBABIPとLuckを残していて、それが成績にもつながっているのですが、とはいえ、非常に高いLD%を残していて(キャリアハイペース)、ベースとなるxBABIPも非常に高い数値を残していることにも注目が必要です。かなり打撃の質も高いと言えるのです。

 さて、ここまでが彼の基礎的なお話でした。そろそろもうちょい深い話に入りましょう。Ichiroは実はここ数年かけて打撃スタイルをあの年で大幅に変えてきていて、それが実を結んでいなかったのですが、今年の好調の原因はそれがとうとう実を結んだのではないかと私は考えているのです。その根拠を色々示そうと思います。

□05

 まずは軽いところから。私大好き(つーか作った張本人だし)P/OとP/PAを見比べてみましょう。キャリアで見るとP/PAは3.48と標準以下で、P/Oも5.29とこちらもまた標準以下の成績です。基本的にはイメージ通り四球を選びに行くのではなく、どんどん振りに行って安打を量産するタイプであることは間違いありません。

 が、その姿勢を変えてきたのが、13年以降ですね。P/PAが13年3.70→14年3.94→15年3.74と上昇させてきて、今年はとうとう4.11(キャリアハイペース)と言う値になっています。Kれはどれくらいの数値かと言うと四球を選びまくることでお馴染みの福留(日本人野手最多四球記録の持ち主)と同等の数字になっているのです。また、BABIPが高いことも相まって、P/Oは6.63とリーグ有数のレベルにまで上昇しました。07年が6.11、262安打の04年ですら5.84ですから、どれだけ姿勢が変わったのかもわかります。ちなみに昨年のMLB全体(リンク先)で見ると9位相当(8位がSantana6.64、9位がCarpenter6.60)の数字です。

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 グラフにすると非常にわかりやすいですね。13年以降まずP/PAが上がり続けています。それと比べるとP/Oの伸びが少なく見えるのですが、今年、とうとう突き抜けた数字を残せているのです。P/Oの伸びが少ないのはどちらかと言うとBABIPが悪く、打率が残せていなかった事が挙げられるでしょう。11年以降はほぼLuck数値がマイナスを記録しています。また、別な視点を挙げるならば詳しくは後述しますが13年以降打席でのアプローチを変えていたにも関わらず、四球が選べない等、結果に繋がっていなかった=アプローチを変えたが身についていなかったと言えるのではないかと思います。

 じゃあアプローチ変えてるって本当?って聞くと本当なんですね。

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 これも使い回しですが。カウント別の打席の割合です。うむ。わかりにくい。

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 うん。これも見にくい。カウント別に違うグラフにします。13枚(13シチュエーション)続けて見せますが、何なら最後だけ見てもらっても構いません。

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 最後を見れば一目瞭然ではありますが、14年以降、急速に下げたシチュエーションと挙げたシチュエーションがありますね。2ストライク以降の打席数は増えていますし、初球から打ちに行くことは減っています。かなり打席での我慢強さが増してきたという印象です。また3-1での打席数の伸びが気になるところです。

 こういうのはわかりにくいのでストライク毎、ボール毎のカウントにしちゃうのが手っ取り早い!!!これも使い回し。

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 ボールカウント毎の打席割合。0ボールが減っていて、3ボールが増えてます。これが13-14年辺りから変わってきた点。今年はとうとう0ボールの割合と3ボールの割合が全く一緒になりました。以前のIchiroでは考えられないレベルですね。

 一方気になるのは1ボールが14年ガクッと下がったのですが、これはまた元通りになっているのですね。そして2ボールは微増傾向。0ボールは減ったけど、1ボールからは普通に打つパターンは元通りの数ってことですかね。

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 ストライクカウント毎も見ていきましょう。こちらはもうちょっとわかりやすいですね。14年以降2ストライクの割合が増えていて0ストライクの割合が減っています。ここは14年以降あまりにも明確に姿勢が変わったのでわかりやすいですね。おそらく13年からこれを始めて14年でそれなりな手ごたえをつかんで、そのまま行くかと思いきや、結果が出ず、それでもその姿勢を維持しながらちょっとずつ変えてみた結果、16年、今年の好成績につながっているのだと思います。

 まとめらしきことをうだうだと書いてみる。

 どこかで見たとおり、ベテランで毎試合出さずに休ませながら使うことで好調が維持できているとか、そういう要素ももちろんあるのでしょう。けれども、Ichiro自身も変わっていない様で、明確にアプローチを変えている訳です。

 また、今年はBB%も高くて三振率が低くて、と言う様な話も聞きますが、実はそれは13年14年辺りからその傾向はあったのです。ただし、38歳とかでMLBという超人たちの集まりの中で打席アプローチを変えるということは簡単ではなく、今年までその結果が出るのに時間がかかってしまったとみる方が自然なのではないでしょうか。例えば12年以降BB%は3.3%→4.7%→5.5%→7.1%→10.3%と上昇していて、少しでも四球率を上げようという努力は毎年見えていましたし、カウント毎の割合を見てもわかるとおりです。また、このパターンの場合カウントを深くするということですから、三振率は上がります。12年9.2%から11.4%→17.7%→11.6%→9.5%と毎年高止まりしていました。今年は減りましたが、これはようやく「ストライクゾーンをコントロールする」能力が磨き上げられてきた事なのではないでしょうか。元々当てる能力は一級品ですから、パワーレスであっても今年の様なアプローチで、42歳にして成績の向上を成し遂げた訳です。ただ如何に化け物でも同じ人間、アプローチを変えるのは大変だったと。一朝一夕でいきなり結果が出た訳ではないんだとわかって欲しいなと思う今日この頃です。

 このアプローチを維持できると、そして今のような起用法と彼の怪我を防ぎ、常に準備する努力をもってすれば、来年もまたそこそこの成績を残せたりするのではないかと思ったりもしますね。3,000本は単なるゴールじゃなくて新たな始まりだと考えて欲しいですね。

☆本日のおまけ その1

 どうせまた、アジア人としてや日本人として誇らしいだのなんだの言ってる人が増殖するんでしょうけれども、なんでわざわざ自分の自己満足のためにIchiroを引き合いにだすのかわかりません。本当に自分に自信の無い人達なんですね、そういう人。Ichiroがすごいだけで、そういう誇らしいと言ってる人はちっとも凄い訳じゃないですよ。Ichiroは本当にすごい打者で、観ていてわくわくする選手で、私にとってはMLBという大きな舞台を見せてくれた、印象に残っている選手です。そういう意味で、おめでとうとは言いたいですが、彼が日本の誇りだとはちっとも思いませんですよ、はい。日本人だからIchiroがすごいのではなくて、Ichiro自身ががすごくて、日本人だというのは後付けのカテゴライズにすぎません。外野手(兼投手?)とか、ホモ・サピエンスとか、脊椎動物とか、その程度の価値だと思ってますよ。いい加減Ichiroの威を借るのは止めにした方が良いと思うのです。

 あ、オリンピックについても同様です。私は単純に超人たちのとんでもない身体能力を見る方が楽しいです。にほんじんのかつやくとかどうでもいいんだよ。

☆本日のおまけ その2

 TBもちゃんと見てますよ、はい。ホームでの3カード連戦だった訳ですが、NYYにはSweep。これはNYYが白旗を上げるきっかけにもなったカードでしたね。その後KCには2-2で五分。まぁここは負け越さなかっただけ立派。Odorizziに今までのムエンゴを帳消しにするかのような12得点に対して2安打無失点投球。こういう時に限って…(笑)んで、MINとの地底王者決定戦には負け越しと。

 なんか正直期待していなかったMillerの好調っぷりがちょっと意外と言うか嬉しい誤算な気がします。期待してなくてスミマセンでした。彼がどこまでこの数字を維持できるのか、ちょっと楽しみです。

☆本日のおまけ その3

 ファンタジーは特に野手陣がイマイチだったりしますが。。。

 今週は野手では8安打3本塁打7打点 打率.34、OPS1.290の佐野ミゲル…じゃないやMiguel Sanoが良かったですね。あとCarpenterが返ってきたのが最大の補強ですわ。StoryがつぶれてGyorkoとか使わざるを得なかったのでね。ついでにFrazierも補強してたりします。

 投手陣は7.1回無失点で勝利のIwakumaでしょうね。ここにきて彼がようやくローテーション投手としての時期になりつつあります。Kershawがいないしね。

 そしてJaysには勝てませんな。あの打撃力は魅力的だ(笑)

☆本日のおまけ その4

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 おまけ画像。わかる人はわかってにやにやすること。わからない人はそのままの清純なあなたでいてくださっても構いません(笑)