Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

【修正】運だけでは勝てない でも運を味方に付けると強いのは間違いない

 売られた喧嘩は買うのが礼儀だ。どーもseriseriです。コメントを頂いた通り、ちょっと記事を修正して書いてみようと思います。

(目的/動機)

 まずはこの記事をお読みください。

強い者が勝つ!それが二つの呪いを解いたエプスタイン・スタイル

 この記事では「今から3~4年くらい前になるでしょうか。

BOSの攻撃・BABIPと防御・被BABIPについて取り上げていた記事がありました。パークファクターからするとフェンウエイにはグリーンモンスターがあるために特に二塁打を中心としたヒットの出やすくメジャーでも屈指のBABIPが高い球場です。サンプルをきちんと採って調べるとBOSの攻撃・BABIPはリーグ1位であるに対して防御・被BABIPはリーグ平均レベルであり、BOSはとても運がいいと結ばれていたように記憶しています。

しかしBABIPの特性を知っていれば、そういう分析にはなりません。まず大前提としてサンプルが多ければ運不運は相殺される。つまりBOSの攻撃・BABIPと防御・被BABIPの格差を決定づけているものとは<運不運>などではなく「力」にこそあるのではないだろうかという仮説が出てきます。というのもBABIPが「運」そのものを表現している指標ではないからです。特に攻撃のBABIPは打者の能力をかなり反映する指標です。」とのこと。ふむふむ。確かに攻撃のBABIPに関してはそれなりに打者の実力を示すこともありますが、運の要素がかなり大きいという事実もありますね。じゃなくて。この記事で指す「BOSの攻撃・BABIPと防御・被BABIPについて取り上げていた記事」とは下の私の書いた記事のことですよね。

やっぱBOSズルいよね。もしかして球場のせい?

 この記事はPFを取り上げるために書いたもので、BABIPが理不尽ではないかと疑問に思ったのが理由です。結構な数のコメントが付きました。私は元々アンチBOSですが、BOSが羨ましいとも思う訳で、野球もアメフトもバスケも良いチームがあって、街も(寒いけど)素敵だし、学問レベルも高くて。まぁでも私はNew Jerseyの北側出身なんですね。ほぼNew Yorker(Manhattanまで車で30分くらい)を自認するレベルで、いわば自分をほとんど都民だと思ってるさいたま市民みたいな?(笑)だから京都とかBostonとはちょっとね、肌が合わないんです。

 アンチBOSということは別にして、このfield_of_dreams氏の記事について、私には思うところがある訳です。それは運要素を動かせるという考え方をしている物についてです。今回はちょっとここを検討してみようと思います。

(方法)

 今回は一先ずALEの地区内各チームのBABIPに絡んだ運要素の年単位での変動を見ていこうと思います。調べるのは以下の項目。

・GB、FB、LDの年度ごとのBABIP(打者に限る:投手が見つけられなかったため)

・チームの総合BABIP(投打とも)

・GB%、FB%、LD%とそこから計算されるxBABIP(投打とも)

・xBABIPとBABIPの差=Luck(投手の場合はxBABIP-BABIP、打者はBABIP-xBABIP)

・投打のLuckを足し合わせ総合的な運不運を調べる。勝率との比較を行う。

 これを02年から16年までの各年度ごとに行います。この年度区切りなのは単純にBatted Ballのデータがあるのが02年からなだけです。

 できたデータを眺めながら考察していきます。また、xBABIPの計算には以下の表を使い回しします。リーグ平均の各打球傾向毎のBABIPとなります。これを打球の割合にかけて、合計することで打球の質から求められる期待されるBABIP=xBABIPとなります。これと実際に記録されたBABIPとの差が「運」なのではないかと言う考え方です。

□01

(結果)

 まずは打者の結果についてALE各チームを並べます。

□02:BOS

□03:BAL

□04:NYY

□05:TOR

□06:TB

 この結果で、見ればわかることをいくつか。BOSが通算で+0.019と地区内最大のプラスを記録しており、また期間中全シーズンでプラスとなっています。打者に関してはホーム球場の特性を活かしていると言えそうです。

 BALは打撃優位なイメージですが、通算はBOS・NYYを下回る+0.006。しかしマイナスは02-03年の2年間だけで、こちらもBOSほどではないにせよ、打者は運に恵まれていそうです。

 NYYは地区2位の+0.008ですが、打撃での運についてはBOSに大きく水をあけられた形。マイナスは13-16年の4年間でここ数年の元気の無さを見ているようです。なお、06年の+0.037は調べた中では地区内最高の数字となっています。

 TORもまた打撃優位なイメージのチームですが、地区最下位の+0.003に留まりました。マイナスは04年07年10年13年の4年間。定期的にマイナスになるようですが、今年は+0.004と15年よりは下げたもののプラスフィニッシュ。

 TBは打撃優位なイメージは無いですが、+0.008と1位の某チームに話された2位タイ。ちなみに08年以前はむしろ投手がボコボコのイメージではあります。いずれにせよ、全チームがプラスで終わっていて、ALEはどこも運が良いように見えますね。その中でもBOSの成績は断トツです。

 続いて投手の方を見ていきます。

□07:BOS

□08:BAL

□09:NYY

□10:TOR

□11:TB

 BOSが全体で打撃優位だっただけに通算で-0.007と僅差ながらワーストを記録。NYYとBALが-0.006で追う形でした。ちなみにBOSは07-08年以外はマイナスを記録していて、打者が大幅プラスを考えれば、球場特性と言うのはあるでしょう。BAL、NYYと同様の傾向があるのが分かります。TORはリーグ唯一マイナスを記録せずイーブン。打の成績もそこまで幸運では無かったですが、割とニュートラルだといえます。イメージにそぐわないですが。そしてTBは-0.003とこれまた何とも言えない感じでした。若干不運と言うところでしょう。

(考察)

 この結果を受けて、色々と考えてみましょう。

□12

 L+LがLuck+Luckでその年の総合的なBABIPの運不運。Wは勝利数、W%が勝率です。グレーがワイルドカードで黄色が地区優勝です。まずはBOSから。やはり気になるのは世界一になった年。期間中04年07年13年と3度記録している訳ですが、その年を見てみると04年+0.031、07年+0.027、13年+0.025と大幅なプラスを記録している年で、地区優勝した今年も+0.023と大きくプラスでしたね。

 そう考えると素晴らしい成績を記録するにはプラスが不可欠と思いますが、05年は-0.001でワイルドカード、09年は-0.006でワイルドカードなど、マイナスでも好成績を記録することは可能です。

 他のチームを見てもBAL唯一の地区優勝は+0.020、TBも2度の地区優勝が+0.016、TORも15年+0.022と地区優勝するには大きなプラスが必要そうに見えますが、04年NYYは-0.012、12年も-0.007と2度、マイナスでの地区優勝を決めています。

 何が言えるかと言うと、大幅なプラスは優勝するための必要条件ではないということです。ですが、大幅なプラスを記録することは地区優勝に大きな加点をすることは間違いなく、0.020以上のプラスを記録しながらPOに進出できなかったのは03年の南の方の某チームだけです。

 逆にマイナスを記録しながらプレーオフ進出は全部で29回中5回のみでマイナスを記録することで大きく足を引っ張られることになるのが分かるでしょうか。

 つまり結局どんなに頑張って良いチームを作っても、大きくマイナスを記録してしまったらどうしようもないということですね。

 ちなみに嫌いだからと言って別にBOSのチーム編成が悪いとか言うつもりはありません(笑)むしろ良いチーム編成をしていて、羨ましいくらいです。xBABIPを比較してみればわかるのですが、他の球団よりもちょっとだけではありますが、良い数字が残されています。それでも毎年プレーオフ行ける訳ではないし、ましてや毎年世界一は不可能です。それくらい野球は、特にMLBのように戦力均衡がはっきりしているリーグでは運によるちょっとの差が天国と地獄を分けることになるのでしょう。

 また、通算で見てみると、BOSが+0.012でトップ。続くのが我らがRaysですが、+0.005に留まっており、さらにTOR+0.003、NYY+0.002、そしてBAL-0.001と続きました。これだけの長い期間でもさらに+0.012を記録するBOSですから、相当なものですね。少なくとも地区内では他を圧倒しているのが分かるかと思います。それに必死に食らいつくTBという構図でしょうか。まぁこれだけ見ればBOSばっかりうらやむなと言う感じでしょうか(笑)まぁでも羨ましいもんは羨ましいもん(笑)

 さて、この数字が果たしてこれが運なのかそれとも実力も反映しているのかという意味では、100%が運だとは言えないでしょう。それは間違いないです。但し、通常のBABIPよりも実力の要素を削って、運の要素をかなり強く出している物にはなっています。それは選手によってある程度の打球傾向は左右できることと、打球の質によって安打になりやすいかどうかが決まるからであり、そこを加味した指標としているからです。

 その中で、BOSは期間中+0.012と地区内では断トツの数字ですし、TBも薄い戦力ながら6年間で4度のPO等結果を出しています。しかも08年以降のTBだと、+0.014以上はPO、+0.011以下はPO行けず、マイナスだと負け越しと言うずいぶんはっきりとした数字が出ています。

 すべてが運だとは言えませんが、これはかなり運の要素が強い指標で、BOSは期間中ずいぶん恵まれていたことは事実なのではないかと思います。もちろん、繰り返しますが、BOSの選手の編成もPO進出に足りるものであったことは間違いないですし、決して運だけでPO行ったのではありません。でも、運要素でも恵まれていることがPOに行くにはかなり大きく加点になる条件でもあるのではないでしょうか。

 ちなみに引用した記事ではfield_of_dreams氏はWARを根拠にお話しをされてましたが、WARは「運も含めてその選手が(あるいは積算ではチームが)現実に残した記録」であり、運不運が既に含まれている指標であることに注意が必要です。例えばWARに使われる打撃指標wOBAが.450記録した選手が、そもそもめっちゃ幸運で.450を記録したのか、それとも実力でそれを記録したのかは考慮に入っていません。単に残した結果でしかないということです。そこからの逆算は唯の結果論でしかないですね。

 いずれにせよ、BOSがかなり良い編成をして、勝負していたのは事実で、今も良い編成をしていると思います。でもそれでも地区優勝するには運に嫌われたら相当難しく、逆に運を味方に付けると難易度が下がり、そして、BOSはそういう意味ではそれなりに恵まれていたという事実がわかったということくらいでしょうか。

 ついでにおまけ。Kershawは通算でK/BBが4.00未満と氏は伝えていますが、誤りですね。4.02とちゃんと4は超えていますが、氏の基準2,000イニングに足りない1,760イニングしか投げてないだけですね(笑)

 もう一つ。運は本当に運であれば、その振る舞いを予想することは不可能です。だから運と言うのです。永遠に幸運の人もいるかもしれませんし、ずっと貧乏くじを引く人がいるかもしれません。可能性は低いですが、事象が独立であるならば、それは理論上あり得ます。例えばじゃんけんで、何らかのアドを取れない限り、永遠に負ける可能性も勝つ可能性もあります。日本人全員でトーナメントしても27連勝だか28連勝だかして優勝する人もいるでしょう。で、その人が次のじゃんけんで勝つ可能性は?と聞かれたら、アドが無い完全な運だと仮定すれば、そしてあいこはもう一度だとしたら、50%です。そういうことです(実際はチョキが出にくいとかあるらしいがそこら辺は考慮せず)。

(まとめ)

・BOSは地区の中でも運に恵まれた方だと私は考える。

・その中でも運に恵まれた年にはPOに出られている。

・POに出るためには運に恵まれた方が可能性がはるかに高いが、必ずしも運に恵まれる必要はない。

・BOSの編成が悪いとは私は言っていない。

・でも運の振る舞いを予想することは不可能(むしろ予測不可能なものを運と呼ぶ)。

(感想)

 そんな感じで今日はここまで。疲れたからおまけは無し。

 あ、そうそう。私の記事(特に遡れば遡るほど)アラだらけの駄目記事が多いです(でも公開しっぱなし)。別にそう言うのはあっても良いと思うし、明確に間違いがあったらまぁ修正とかした方が良いかもしれないし。指摘を受ければちゃんと甘んじて受けるし。そういう感じです。何か見つけて気になったらご一報いただければ、時間に余裕があれば反応するかもです。

 氏の記事についてはちょいちょい反応しているのですが、ちょいちょい気になることばかりを書いてくださっていて、本当わざとなのではないかと思うことが多々あるのです。単なる報道系のブログとか、観戦記的なブログだと別に何かしたいことは無いのですが、主張をしているブログで、私自身の考えと不一致が発生すると、ちょっと色々調べてみたくなりますよね。そんな感じです。