恐れていたことが起こってしまった【セカンドコリジョンについて】
FBRについての連載中ですが、ちょっと気になる出来事があったので、いったん中断してみようと思います。
まずは7月1日、甲子園で行われたヤクルト-阪神戦。7回に1塁走者バレンティン、打者大引で、大引がセカンドゴロ。二塁ベース上で送球を処理した遊撃手の糸原と交錯しました。
この結果、審判がビデオ確認の上で、野手に向かったスライディングと判断し、守備妨害が宣告され、打者走者の大引もアウトとなりました。
この事件自体は糸原が怪我をすることなく終わったため、大きなトピックにはなっておりませんが、私は本件に大きな危惧を抱きます。まず一点は、本当にこれがいわゆるセカンドベース上での新たな接触/妨害を禁ずる行為に当たるかどうかという点です。
現行のルール上では確かにこれは守備妨害を宣告されてもおかしくないのは事実でしょう。「審判が危ないかどうか判断して、危ないと判断されれば守備妨害を適用可能」というルールですから。問題はこのルールが適当かどうかだと思います。私はそもそも一度この件についておまけ欄で少し触れています(参考:遅ればせながら 新年あけましておめでとうございます 2ページ目)。
参考のページでも記載している通り、NPBの併殺崩しのスライディングによる妨害行為の禁止について「審判の主観で危険かどうかを判断し、適用する」点について、まずもってあり得ないと思いますし、このようなズレた用法をしているので、このルールは良くないと考えます。一方MLBでは・手足がベースに届かない走塁 ・途中で方向を変えた曲線的なスライディング(直線的なスライディングは可) ・先に地面に身体が接触しないうちに野手に接触するスライディング(飛び蹴り) ・ベースを行き過ぎて戻れないスライディング という客観的な点について禁止しています。これに当てはまらない走塁は適法となります。
さて、ここで、再度バレンティンの走塁を見てみると、
・手足はベースに届く位置に向かって走塁している。
・途中で方向は変わらず、ベースに向かって一直線である。
・先に脛が地面に着いてから糸原に接触している。
・ベースを行き過ぎていないし、ベースを行き過ぎる勢いでもなさそう。
とみることが可能です。というか事実です。つまりMLBの現行の基準(16年から施行なので、バレンティンはそのルールでMLB/MiLBでプレー経験はない)で見ると、明らかに守備妨害を取ることは不可能であり、完全に「糸原の自滅」としか言えないのです。
これに対して、NPBの現行ルールだと「うわーガイジンに小さい日本人が削られた!!!危険っぽい!!!うん、そうだそうだ!!!」という客観性の欠片も無いやり方をしたうえで、打者走者の大引をアウトにしています。これが適用されるのであれば、二塁ベースから一塁ベース寄りに走りながら投げて削られた方がわざわざエラーしかねない送球をするよりも効率よくアウト取れそうですね。
このように、明確で客観的な基準を持たないで審判の主観によって判断されることが一番危険だと感じます。なぜ、MLBを追いかけて危険走塁禁止規定を作ったにも関わらず、客観的な評価を導入せず、主観的な判断のみとしたのかは本当に理解に苦しみます。全てがMLBと同一である必要は無いとは思いますけれども、客観的で明確な基準を排除したのは明らかに間違いでしょうし、今からでも修正し、来シーズンには基準を明確にすべきだと思います(その基準がMLBに倣う必要はないが、大いに参考にはなると思う)。
ちなみにMLBの場合はルール違反の走塁があった場合、接触や怪我、危険性の有無は問わずにアウトになりますね。相変わらずよく見かけるのは全然違うところに向かってのスライディング(直線的ではない、手足が届かない範囲)ですね。
もう一つ、繰り返し言っておりますが、昨年日ハム田中とソフトバンク川島の交錯についても、
・手が届く範囲に
・一直線に
・先に地面に接地したうえで
・きちんとベース上に留まった走塁
であり、適法とみなす方が妥当でしょう(MLBの場合は)。NPBの場合だと、正当な走塁すらも、1塁側に流れてきた野手の身体に接触してしまった場合でも(なんなら野手側の故意でも)、危険走塁と判断されるのはおかしいでしょう。
さらに私が気に食わないのは、翌日、東京ドームで行われた横浜-巨人戦。5回裏に走者小林、打者長野の場面で、長野がサードゴロ、ボールがセカンドに転送され、二塁手石川に走者の小林が接触した件。セカンドベース踏んでないのはこの議論の外側なので置いといて、こちらは守備妨害を宣告されることなく、打者走者の長野は生き残りました。そして、石川は小林と派手に接触し、負傷退場となってしまいました。
これについて小林の走塁は
・手足が届く範囲であり
・一直線であり
・先に地面に接触していて
・ベースにそもそもたどり着く前に接触されてしまっているが、行き過ぎた事実はない
ため、MLBの基準では適法ですね。が、石川と接触し、負傷させたという事実に対して、小林への危険走塁の判定はありませんでした。
これが、このルール最大の問題点と言えるでしょう。はっきり言って、バレンティンのパターンと小林のパターンで状況はほぼ同じにも関わらず、片方は危険走塁と判断され、もう片方は適法とされた点において、この「審判の主観で判断される」点の問題が浮き彫りになりました。
このようなパターンが今後も出てこないはずはなく、早急に「客観的な基準」を設けるべきでしょうね。接触したら問答無用で危険走塁とかでも良いので。
本日のまとめ
・現行ルールの「審判の主観」で決まる点が許せない
・早急に客観的な基準を決めるべき
・でもバレンティンの走塁は危険ではないよなぁ。アレ危険だったら走者は走塁できなくなる。
というところで今日はここまで。
☆本日のおまけ その1
ちょっと色々あったのですが、今年もタンパに遊びに行くのはナシになりそうです。。。このタイミングの異動とかアリエン…。