Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

違和感がある 山口俊投手への処分

 はい、ご無沙汰をしております。Seriseriでごじゃい。まぁね。忙しくて忙しくて、まともにいろいろ追いかけてる余裕すらない感じですよ。TBについては本当勝敗くらいしか見れてません。。。

 というわけで本題。

 旧聞になりますが、トラブルを起こした山口俊投手への処分が巨人の球団から発表になりました。ものとしてはそこそこ重大な処分となりました。その処分の重さとか内容についてを本件では議論したいとは思いません。また、山口投手の行った行為については、明確に過ちであったことは疑いようがなく、彼には十分な反省と再発防止を求められるのは間違いない点だとは思います(私が何かやれとかは何も言いませんが)。

 ですが、これについて私は大きな違和感を持ったので、記事にしようと思いました。その理由が、「処分を決定した機関が巨人の球団であること」です。なぜここに違和感を感じるかというと、MLBNFLとあるいはサッカーのJリーグの処分の方法が違うと感じたからです。どんなリーグであっても、多様な人物がいますから、フィールド上の内外を問わず、様々な問題が発生します。乱闘事件から、DVやら、薬物やら、あるいはファンの挙動やら、なんなら家族や恋人との私的な内容の写真が流出しちゃったみたいなのまで、トラブルはさまざまで、それに対して相応の処分というのが発生します。それが厳重注意で済むことも、罰金だったり、出場停止やリーグからの追放だったりという重たい処分までさまざまです。

 さて、MLBでその処分を下すのは誰でしょうか。通常はリーグ(MLB機構)です。NFLの場合もリーグです。Jリーグもリーグがその処分を決定します。チームは大切な財産である選手が処分されることは困りますから、半ばポーズであっても、リーグ側に異議申し立てを行います。MLBの乱闘とかでチームが異議申し立てして、処分が最終的に決定されるまでは選手が何事もなかったかのように出場することはよく知られている通りです。

 この場合(いかに選手に非があることが明白であっても)、チームは選手を守る立場であり、異議申し立てをすることで、チーム側が選手を守っているのだよというメッセージを送ることにでもあります。同じく選手会もリーグ相手に異議申し立てをすることがありますね。

 しかし、今回の山口投手の件について、リーグ側は表立って何らかの処分を下してはいません。そして処分を下したのは巨人という球団です。これによって、球団側が「自浄作用」を示したという対外的なメッセージを送ることになっていると想像します。

 とはいえ、NPB機構からの処分がないことによって、1.第三者的な視点からの処分がないことで、統一的な処分の判断基準がなく、客観性に欠けること。例えば、球団ごとに処分が変わってしまう可能性がある。2.リーグとしての仕事を何もせず球団にすべて押し付けてしまっていることで、リーグの信用を落としてしまうこと。3.本来選手を守るべき球団が、逆に選手に対して牙をむく形になるので、選手側が球団側への信頼ができなくなってしまうこと。4.「自浄作用」を示すのであれば、リーグとしての処分を下し、リーグ全体で統一の再発防止策を公開することで、「リーグとしての自浄作用」は十分示せること。というようなメッセージを対外的に示すことになるかと思います。この整理をすることで、私が感じる違和感についての裏付けができるかと思っています。

 そしてそもそも罰金がある訳ですけれども、その罰金は誰に支払うのかというところも違和感があります。つまり選手が球団に払う点についての違和感です。これって体の良いサラリーダンピングで球団が処分を決定することで極端なことを言えば「球団が得する」形にもとれます。山口投手が公式戦で投げれてなかったことも相まって尚更そういう印象が強くあります。リーグへの罰金であれば、巨人という球団が得しない形になるので、球団への処分(管理責任的な意味でも)としてみることも可能ですしね。これで仮に山口投手が主戦力の投手だとして、9月10月のリーグの勝負所、十分な反省はなされたといいながら投げ始めたら、おいおいずるいぞとなるでしょう。でもリーグじゃなくて球団の処分であるってことはそういうことでもあるんですよね。。。リーグとしての公平性を担保できていないということです。

 なんでもかんでもMLBの行為が良い訳じゃないぞという指摘についてはその通りだと思いますが、本件については、明らかに、球団が処分機関という点ではおかしいと思いますし、リーグが処分機関として機能すべき内容だと考えています。

 というところで今日はここまで

《今日のポイント》

・山口投手が処分されることについては問題がない

・今日の論点としては山口投手の処分の重さは考慮していない

・リーグではなく、球団が処分を決定したことに違和感がある

・リーグが処分を決定するということに意味がある

・ぶっちゃけ、リーグは何をやっているんだ?と思う

☆本日のおまけ その1

 最近、甲子園が好きじゃないseriseriです。いや、正確には高校野球は好きだし、甲子園球場はかっこいいから好きだし…なんですが、真夏の昼間に高校野球をやるべきなのか?とか怪我を押して出場が格好いい?とか、なんというか高校野球ではなく観客サイドの「俺たちの甲子園」みたいなののほうが優先されてしまっているのが嫌いな点ですね。ええやん、日本一を東京ドームで決めても。複数会場使ってもいいじゃない。そしたら同じ2週間の日程でも中2日くらいは作れそうだし。

 一時期はやった感動の押し付けのアレと一緒ですよ、本当にもう。。。

☆本日のおまけ その2

 こないだ公園で少年サッカーの練習(小学校3年生くらいかな?)を見たのですが…少年野球の指導と同じような気持ち悪さを感じてしまいました。何が嫌って、少年たちが随所に見せる好プレーに対して、指導者の大人は何も言わない。その代わりに、ちょっとしたミスや、指導者の意のままに動かない点について叱ってばかり。休憩時間中もほとんどお説教タイム。あんなんじゃ絶対に面白くない。

 もちろん、ハードに競技を、真剣にプレーするうえで必要な厳しい指導や、体力的に限界を押し上げるような辛い練習ってのはどこかで必要になるでしょう。でも、それもこれもより「良いプレー」をするためのものだと思うし、特に小学生の小さい子には良いプレーには素直に良いとほめてあげるべきでしょう。

 上がってきたクロスを完璧にコース狙ってジャンピングボレーしたプレーとかあって、かっこいいと思ったのに、GKやってた指導者がドヤ顔で止めて、他の子のカバーが悪いだの、味方のボールになったらさっさと攻撃に移れだの、怒鳴り散らしておりました…。

恐れていたことが起こってしまった【セカンドコリジョンについて】

 FBRについての連載中ですが、ちょっと気になる出来事があったので、いったん中断してみようと思います。

 まずは7月1日、甲子園で行われたヤクルト-阪神戦。7回に1塁走者バレンティン、打者大引で、大引がセカンドゴロ。二塁ベース上で送球を処理した遊撃手の糸原と交錯しました。

 この結果、審判がビデオ確認の上で、野手に向かったスライディングと判断し、守備妨害が宣告され、打者走者の大引もアウトとなりました。

 この事件自体は糸原が怪我をすることなく終わったため、大きなトピックにはなっておりませんが、私は本件に大きな危惧を抱きます。まず一点は、本当にこれがいわゆるセカンドベース上での新たな接触/妨害を禁ずる行為に当たるかどうかという点です。

 

 現行のルール上では確かにこれは守備妨害を宣告されてもおかしくないのは事実でしょう。「審判が危ないかどうか判断して、危ないと判断されれば守備妨害を適用可能」というルールですから。問題はこのルールが適当かどうかだと思います。私はそもそも一度この件についておまけ欄で少し触れています(参考:遅ればせながら 新年あけましておめでとうございます 2ページ目)。

 参考のページでも記載している通り、NPBの併殺崩しのスライディングによる妨害行為の禁止について「審判の主観で危険かどうかを判断し、適用する」点について、まずもってあり得ないと思いますし、このようなズレた用法をしているので、このルールは良くないと考えます。一方MLBでは・手足がベースに届かない走塁 ・途中で方向を変えた曲線的なスライディング(直線的なスライディングは可) ・先に地面に身体が接触しないうちに野手に接触するスライディング(飛び蹴り) ・ベースを行き過ぎて戻れないスライディング という客観的な点について禁止しています。これに当てはまらない走塁は適法となります。

 さて、ここで、再度バレンティンの走塁を見てみると、

 ・手足はベースに届く位置に向かって走塁している。

 ・途中で方向は変わらず、ベースに向かって一直線である。

 ・先に脛が地面に着いてから糸原に接触している。

 ・ベースを行き過ぎていないし、ベースを行き過ぎる勢いでもなさそう。

 とみることが可能です。というか事実です。つまりMLBの現行の基準(16年から施行なので、バレンティンはそのルールでMLB/MiLBでプレー経験はない)で見ると、明らかに守備妨害を取ることは不可能であり、完全に「糸原の自滅」としか言えないのです。

 これに対して、NPBの現行ルールだと「うわーガイジンに小さい日本人が削られた!!!危険っぽい!!!うん、そうだそうだ!!!」という客観性の欠片も無いやり方をしたうえで、打者走者の大引をアウトにしています。これが適用されるのであれば、二塁ベースから一塁ベース寄りに走りながら投げて削られた方がわざわざエラーしかねない送球をするよりも効率よくアウト取れそうですね。

 このように、明確で客観的な基準を持たないで審判の主観によって判断されることが一番危険だと感じます。なぜ、MLBを追いかけて危険走塁禁止規定を作ったにも関わらず、客観的な評価を導入せず、主観的な判断のみとしたのかは本当に理解に苦しみます。全てがMLBと同一である必要は無いとは思いますけれども、客観的で明確な基準を排除したのは明らかに間違いでしょうし、今からでも修正し、来シーズンには基準を明確にすべきだと思います(その基準がMLBに倣う必要はないが、大いに参考にはなると思う)。

 ちなみにMLBの場合はルール違反の走塁があった場合、接触や怪我、危険性の有無は問わずにアウトになりますね。相変わらずよく見かけるのは全然違うところに向かってのスライディング(直線的ではない、手足が届かない範囲)ですね。

 もう一つ、繰り返し言っておりますが、昨年日ハム田中とソフトバンク川島の交錯についても、

 ・手が届く範囲に

 ・一直線に

 ・先に地面に接地したうえで

 ・きちんとベース上に留まった走塁

 であり、適法とみなす方が妥当でしょう(MLBの場合は)。NPBの場合だと、正当な走塁すらも、1塁側に流れてきた野手の身体に接触してしまった場合でも(なんなら野手側の故意でも)、危険走塁と判断されるのはおかしいでしょう。

 さらに私が気に食わないのは、翌日、東京ドームで行われた横浜-巨人戦。5回裏に走者小林、打者長野の場面で、長野がサードゴロ、ボールがセカンドに転送され、二塁手石川に走者の小林が接触した件。セカンドベース踏んでないのはこの議論の外側なので置いといて、こちらは守備妨害を宣告されることなく、打者走者の長野は生き残りました。そして、石川は小林と派手に接触し、負傷退場となってしまいました。

 これについて小林の走塁は

 ・手足が届く範囲であり

 ・一直線であり

 ・先に地面に接触していて

 ・ベースにそもそもたどり着く前に接触されてしまっているが、行き過ぎた事実はない

 ため、MLBの基準では適法ですね。が、石川と接触し、負傷させたという事実に対して、小林への危険走塁の判定はありませんでした。

 これが、このルール最大の問題点と言えるでしょう。はっきり言って、バレンティンのパターンと小林のパターンで状況はほぼ同じにも関わらず、片方は危険走塁と判断され、もう片方は適法とされた点において、この「審判の主観で判断される」点の問題が浮き彫りになりました。

 このようなパターンが今後も出てこないはずはなく、早急に「客観的な基準」を設けるべきでしょうね。接触したら問答無用で危険走塁とかでも良いので。

 本日のまとめ

・現行ルールの「審判の主観」で決まる点が許せない

・早急に客観的な基準を決めるべき

・でもバレンティンの走塁は危険ではないよなぁ。アレ危険だったら走者は走塁できなくなる。

 というところで今日はここまで。

☆本日のおまけ その1

 ちょっと色々あったのですが、今年もタンパに遊びに行くのはナシになりそうです。。。このタイミングの異動とかアリエン…。

【連載】フライボールレボリューションの損益分岐 ~負の効果もある?~

 本記事は連載の中の1記事です。記事単体で読んでもわかるようにしてありますが、連載を通して読みたい方は、下記リンク先の目次から読んでいただければと思います。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/seriseri/article/283

(目的)

 ここまで、本連載ではあくまでもBatted Ball、つまりボールにバットが当たり、フェアゾーンに飛んだ時の結果についてのみ、議論してきた。その結果として、今まで考えていたよりもはるかに(強い)フライを打つことの効果があることが分かってきた。しかし、すべての打席でボールにバットを当てられる訳ではない。ボールにバットを当てることなくアウトになることもあり得る。それを三振という。三振は、打撃の結果として基本的には百害あって一利なしである。例えゴロであれ、ボールにバットを当てることに成功し、フェアグラウンドに飛ばせば、セーフになる確率の高低はあれど、0ではない。三振はほぼ100%0である。この差は決して小さいものではない。

 本記事ではこれまで考慮に入れていなかった三振について、フライとの関係を考察していきたい。

(方法)

 まずは三振率を変数とし、MLBの全打席に対する安打、二塁打三塁打本塁打四死球を固定したうえで、得点力に直結すると考えるOPSの変化を確認する。なお、K%は0~50.0%の間で変動させた。

 続いて、三振率とフライボールレボリューションの関係を考察するために、HR/FB等との相関を見る。今後の三振率を連動させた、モデルを作成することを目標とする(本記事ではそこまで言及しない)。

(結果1)

 まずは上記のとおり、三振を変数としてOPSの変化を確認した。

□01

(考察1)

 上のグラフのとおりの挙動となった。言うまでもなく、三振が増えればOPSは下がる。ここは何があっても間違いない点である。変化率としてはy=-0.9166x+0.954である。三振率1%に対して、16年の打撃成績の比率であるとOPSが0.009下がることになる。また、三振を一切しなかった場合のOPSは.954であり、これはFBのOPSよりも高い数字である。三振を考慮に入れなかった場合、より高いOPSを残すためには・四球を増やす・LDを増やす・GBを減らす・HR/FBを上昇させるなどの方策が考えられる。FBを減らしても差はほぼ無いため、OPS変動(この場合上げる)の効果は薄いと考えられる。

(結果2)

□02

□03

(考察2)

 よく知られている通り、打者の三振率と四球率の相関は非常に弱い。昨年の相関係数は0.198である。これは三振と四球のバランスが各打者によってあまりにも違っているため、全体の傾向としては相関が無い(四球が多いと三振が多い傾向にあるとは言えない)のである。カウントを深くする打者、早打ちの打者、ボール球には手を出さない打者、とにかく当たらない打者、さまざまである。

 一方で3番目の図を見てもらえればわかるように、実はHR/FBと三振率は0.594とそこそこの相関係数が出てくる。

□04

 規定打席以上から250打席以上まで広げてみても相関係数0.542と傾向は変わらない。つまり、HR/FBが高い打者はK%も高い傾向にあると言える。理由自体は様々考えられるだろうが、やはりMLB選手といえども、しっかりと強く振る=ある程度の精度を犠牲にする形でないと、フェンスを越えることは難しいのだとわかる。あるいは、HRにできる球が来るまで、ある程度はカウントを深くすることもあるのだろう。

 いずれにせよ、HR/FBが上がれば単純にOPSが上がり、得点への寄与が上がるとは言えない結果であり、むしろ三振が増えることにもつながる。本来非力な打者が無理矢理本塁打を狙うことは一定以上の注意が必要だろう。

□05

 縦軸と横軸を逆にした図を掲載する。この時の近似曲線がy=0.527+0.1306となっているつまり、HR/FBを1%上昇させると、K%が0.527%上昇することを示しており、これをOPSへの相関へ無理矢理当てはめると、OPSが0.0048下がるという結果である。

 さらに言うと、HR/FB1%当たりの打球結果のOPSへの貢献は0.0473程度であることが以前の記事で明らかになっている。

 このことから、HR/FBを上げることは1%当たり0OPS.0473-0.0048=0.0425程度の貢献となるのではないかと考えられる。これはもちろんK%が近似曲線通りに上昇した場合の事である。三振が増加することからのOPSへのマイナスは、HR/FBが上昇するのに伴って上昇するOPSの1/10程度の影響しかないのではと考えられる。

(まとめ)

・三振が増えると当然OPSは下がる。

・三振とHR/FBは弱い相関があるように見える。

・HR/FBが上がるとK%も上がる(およそ0.55程度の割合)。

・HR/FBが上がったことに対するOPSの上昇の方がK%上昇による低下よりも影響が大きそうである。

 というところで今日はここまで。

☆本日のおまけ その1

 西武の投手コーチをしていて、元TB戦士の森慎二が多機能不全でお亡くなりになりました。心からご冥福をお祈りいたします。42歳ということで、あまりにも早い死です。原因はわかりませんが、直前までコーチとしてチームに帯同していたとのことですから、突然のことなのでしょう。ある種誰にでも起こり得ることで、怖いですね。

 TBでは非常に不運な形での怪我で戦力となることはできませんでしたが、私はずっと期待していて…。とても好きな投手でした。

 また、BCリーグでは4年間監督経験があり、素晴らしい実績を残しておりました。こちらも含めて、今後の指導者としてのキャリアアップが期待されていたところでもありましたね。あまりにも残念です。。。

【連載】フライボールレボリューションの損益分岐 ~競争相手はエリートだけじゃない~

 本記事は連載の中の1記事です。記事単体で読んでもわかるようにしてありますが、連載を通して読みたい方は、下記リンク先の目次から読んでいただければと思います。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/seriseri/article/283

(目的)

 前回の記事では平均的な打者の残したLDのOPSと比較して、どこまでHR/FBを上げればFBのOPSが上回ることが可能かを中心に論じた。その結果、不可能ではないが、かなりのパワーを発揮できる打者で無いとLDよりも高いOPSを残すことは困難であるとわかった。併せて平均的なパワーしか発揮できない打者は(打球傾向の内訳ができるのであれば)LDを打った方が効率よく得点に寄与できるとした。

 本記事では比較対象をLDだけではなく、より視野を広げて、フライボールレボリューションが適用される範囲を調べ、論じるてみたい。

(方法)

 まずはLD+GBの打球結果、特に得点に直結すると考えられるOPSに比重を置いて調査し、それをFBの結果と比較する。

 次に、前回使用したものと同じグラフを用いて、HR/FBを動かし、HR/FBがどれくらいの打者であればLD+GBの打球結果よりもFBの打球結果が上回るかを調べる。

 これはLD:GB:FBの比を固定したまま、LD+GBの打球結果=FBの打球結果となる方程式をHR/FBを変数として求めるものと言える。

 最後にこの数字を実際の打者の結果と比較し、どれくらいの打者であれば、フライボールレボリューションが有効となる可能性があるか(=LD:GBの比を固定したままFBを増やしたら、得点への寄与を上げる可能性があるか)を調べる。

 なお、本件はすべてインプレー中の打球(BIP)について語るため、三振の影響は考慮に入れない。また、BABIPに代表される、いわゆる「運」と呼ばれるものも考慮に入れず、リーグ平均を用いることでその影響を排除する。

 最後に、特に断りが無い限り、本記事は2016年の結果について扱う。そのため、何かない限り、2016年の傾向であると言える。当然のように年度毎に傾向が変化することはあり得る。

(結果1)

GB      .239/.239/.258 OPS.498

LD      .689/.679/.886 OPS1.565

FB      .241/.235/.715 OPS.950

GB+LD   .381/.380/.461 OPS.841

(考察1)

 結果1からわかる通り、FBのOPSが.950であるのに対し、LD+GBのOPSは.841となった。つまり、リーグの平均的な打者であればFBのOPS>GB+LDのOPSであり、LD:GBの比率が変わらないと仮定した際に、FBを多く打てば、よりOPSが高くなる=得点への寄与が上がると言える。この事実だけでもフライボールレボリューション推進派がよりフライを打つ方へシフトした方が良い結果が残しやすいと主張することがわかるだろう。

 LDは確かに非常に有効な打球傾向であり、LDだけを選んで毎回打てるのであれば全く問題は無い。全員全盛期のBonds並みのOPSを残せるのである。実際にLDだけを選んで打つことは非常に困難であり、ともすればGBにもFBにもなってしまう。打球傾向としてLDを打てるのはせいぜい2割前後である。それに比べればまだFBを正しく打つことが可能だとなればFBを増やすことが容易=よりFBを打つことを推進した方が、より得点が期待できると言えるのだろう。また、打球結果のOPSがわずか.498でしかないGBを打つ可能性がLDとFBと比較した際にFBの方が小さくなるのであれば、それもまた、フライを打つことを推進することにもつながるだろう。

(結果2)

□01

 前回も使用したこの図を用い、FBのOPSが平均的な打者のGB+LDのOPS(.841)となる点を求めた。その結果、HR/FB10.21~10.23%でOPSが.841となった。

(考察2)

 前回の記事ではLDとの比較だったため、HR/FBが25-26%というかなり高いハードルが求められたのだが、今回は10.21~10.23%というある種「平凡な」結果に収まってしまった。これは非常に大きな意味を持つ数字になると感じる。感じる点をいくつか。

 まずLD:GBを変えない、BIP%を変えないという条件の下であるが、FBを多く打てばOPSが上がる可能性を持つ選手に求められるHR/FBが10.3%程度であれば、数多くのMLB選手にフライをもっと打つことが得点につながると言えるのではないか。

 ちなみにHR/FB25%を超えるような一種の化け物クラスたちは、LDよりもさらにFBの期待値が高いので、FBを単純に打ちまくれば良いと思う。

 その間の中間層の選手たちは求められるものは多い。三振を増やさず、LDを増やさずという条件なので。しかしこの層がしっかりとしたFBを打てるだけで、様々なものが変わってくる可能性を秘めている。これによってさまざまなものが変わってきている現状が「フライボールレボリューション」なのではないか。

 つまり、このHR/FBが10.2~25%程度の選手たちがこぞってFBを打てるようになってきているのがこの革命の正体であるのではないか。10%強のHR/FBは平均的なMLB選手にとってはそこまで高いハードルではない。

 また、副産物としてLD/GBの数字が大きくなるのであれば、LDのOPS>GBのOPSからもわかる通り、それもまたOPSの増大(≒得点力の増大)につながるので、悪い選択肢ではなく、逆に三振が増えるのであれば、無条件でのアウト(OPS.000)が増加するので、こちらはOPSが下がる(≒得点力が下がる)につながるので、場合によっては悪手となり得る。ここのバランスからOPSが上昇するのであれば、FBを打つことはより良い得点力増強手段であると言えるのではないだろうか。

 当然のように、この中間層にいるからと言って無条件にFBを打てばよい訳ではないことに注意が必要。例えば極端にLDが多くGBが少ない打者や、FBを増やした結果三振が増えてしまった打者等。ここは注意が必要である。

(結果3)

 ではこれをもって2016年のMLBの各打者(規定打席以上)のHR/FBを確認してみる。

□02

□03

□04

□05

□06

スポナビ+の仕様上、30名程度ずつに絞って掲載

(考察3)

 大体110位、D.J. LeMahieu(COL)よりもHR/FBが高い打者に関してはこのフライボールレボリューションが適用される可能性がある。規定打席以上の選手は146名であるので、実に3/4もの打者にその可能性がある。過去、フライを打っても良いラインがLDを超えるHR/FB25%、大体MLB上位3%程度だったと仮定して、それが上位75%まで広がったと考えると、それは確かに、そして明確に革命と言われるレベルの変化を球界にもたらすだろう。これはすさまじいことである。。。

(まとめ)

・LD:GBを変えない、BIP%を変えないという条件下だが、HR/FBが10.2%程度あればFBを増やすことに意味が出てくる。

・これはMLBの規定以上の打者だと3/4の選手が当てはまる。

・過去は3%程度だったとして、実用的ではなかったが、各種解析・技術革新等で、実用ラインが大きく下がった。

・革命です確かに。

 

 というところで今日はここまで。すげーわ、マジで。

☆本日のおまけ その1

 ってかさ、三振率0で、四球も0、すべての打席でゴロを打ったと仮定しても、平均的なMLBの打者ではOPS.498にしかならないんだよね?この年のMLBの打者で規定打席以上の打者でOPS最下位がAdeiny Hechevarriaで.594。これだけで、ゴロ打ちがどれだけ悪い手段かがわかるものだわ。エラー?そんなんでOPS.100もひっくり返るほどMLBの選手は喝!!!って日曜の朝には言われてないし(笑)、仮にエラー誘発しまくってOPS.100ひっくり返ってようやく「リーグ最下位のOPS」に並ぶくらいであって、別に褒められたものではない。

 打席数を少しずつ減らしていってこのOPS.498のラインを最初に下回るのはCeleb Joseph。141打席でOPS.413。100打席以上で.498未満のOPSの選手はShane Robinson(.492)、Josh Thole(.474)、Ryan Hanigan(.468)、Daniel Castro(.449)とJosephの5名しかいない(いずれも111~141打席しか与えられていない)。

 その程度の打者を生み出すために、日本では日夜、ゴロを打てば何が起こるかわからん。とにかく叩きつけろ、絶対に上げるなと言われ続けているのである。MLBではフライを打てばフェンス超えるかもわからん。とにかく強く上げてみろという教えが広まりつつある中で。これは別に日本人とその他の人種の体格差、身体能力差で片付けられる話題とは、私は思わない。だってNPBの選手だって、ちゃんと打てばちゃんとフェンス超える人いっぱいいるし、Altuveはちっちゃいもん。背が。

 ちなみにアレでしょ?強いゴロは併殺打になるからこれも打っちゃいけないんでしょ?(笑)

【連載】フライボールレボリューションの損益分岐 ~寄り道~

 本記事は連載の中の1記事です。記事単体で読んでもわかるようにしてありますが、連載を通して読みたい方は、下記リンク先の目次から読んでいただければと思います。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/seriseri/article/283

(目的)

 連載用に記事を書いていてら面白いことを見つけたけれども直接本論に関係なさそうなので、ちょっと紹介していこうと思ったので、書いてみる。前のスタイルなので読みにくいと思うが、別に勝手に自己満足したいだけの記事なので良しとする。

(方法)

 今回はパスらせてくだしあ。

(結果)

 これも今回はパス。つらつらと語りまっせ。と思ったけど、これだけ載せますわ。各打球傾向のリーグ全体の傾向

□01 FB。本記事では全部青で表示

□02 LD。本記事では全部緑で表示

□03 GB。本記事では噛ませ犬全部赤で表示 

(考察)

 まずはこういうの気づいちゃったのです。

□04

 各打球のOPSを並べたものです。まず気づくのが緑(LD)。02年から一貫して右肩下がりでどんどん下がっています。02年はOPS1.801もありましたが、今は1.565でしかありません。わずかな差ではありますが、下がり続けているのが気になりますね。

 もう一つ気づくのが青(FB)。02年時はOPS.737、03年では.704で底を打ちましたが、その後.800台を維持していました。が、15年16年、それこそテーマにしているフライボールレボリューションの走りと共に.891、.950と一気に上昇してきました。これは何かありそうですね。

□05

 ついでなのでスラッシュライン3点セットも見ていきましょうね。OPSの中身を分解する感じ。まずは打率。ここで見えるのが、やっぱりLDが徐々に下がっていること。逆に05年以降、FBに大きな変動はなく、GBはほぼ変化なしです。

 古の時代、フライよりもゴロの方が打撃では価値が高かったそうな。そのころは打率なる指標で、選手が評価されていたそうな。この表を見ればわかる通り、ゴロはフライよりも少しではあるが、打率が高い。そういうことだったんだろうなぁ。。。

□06

 OBPは打率と一緒なので別にいうこと無いや。

□07

 SLGを見せる前についでにこれ。みんな大好きBABIP。個人的にばびっぷって呼び方は好きじゃない。べいびっぷならまだわかるけどさ。BABIPで比較するとフライは極端に低い数字であり、それは15年以降も変動が無い。けど実は02年03年はもっと低い。LDは下降傾向が続いている。これ、本当なんなんでしょうね。

 古の時代、まだ人々の評価が打率で決まっていたころ。フライを打つことは悪とされていた。なぜならフライは打率が低くなるからだ。ホームランなんて狙って出るものではない。であれば転がした方がまだ打率が高い。そう、「MLBほどのパワーが無ければ、ゴロの方がフライよりも打率は高くなりやすい」のである。

□08

 はい、お待たせしました。SLG。見ればわかる通りまずは15年16年の青が注目ですね。明確に強烈な伸びを示していて、先ほどのOPSの上昇分はここで話がつきます。FBの長打力が明確に伸びているのがわかります。逆に緑色、LDがきちんと右肩下がりで、LDはBABIPも下げ、さらにパワー面でも数字が下がっていますね。

 [カッコ内な明確な根拠がない想像でしか話せないものですが、思ったこと。このLD%の下げ方は明らかに何らかの意思を感じます。とにかく毎年少しずつ下がっているのです。特に11年くらいにSLGOBPOPSもカクンと少しですが、下げているのです。これはやっぱりシフトを強く敷いていたことが原因になるんでしょうか。GBもそうですが、強く引っ張ったLDには殊の外よく効きそうですからね、シフト。]

 で、まだ終わらないんですよ、話したいこと。シフトの話で終わらないんですよ。

□09

□10

 wRCとHR%(HR/FB、HR/LD、HR/GB)です。まぁFBR(フライボールレボリューション)の事は見ればわかるから放置しといて。注目すべきは02年~05年です。前にも話したと思うんですが、これで見るとあまりにも顕著に出てきたので。02-05年の間にMLBでは何が起こったかというと、薬物禁止規程が作られ、施行されました。04年にルール違反となり、05年に三審制が敷かれました。その結果何が起こったか。LDのwRCが急降下し、代わりにFBが急上昇しました。HR%は変わらんと思えますが、LDのHR%がガクッと落ちています。現在は大体0.4~0.7%というHR/LDですが、ピークの03年には2.28%もの値を記録しています。明確にLDが野手の間を抜けて長打になったり、本塁打になったりが減っているのです。対策としてボールを打ち上げるようになったりして、04年あたりからFBがちょこっと上昇した感じですかね(今ほどではない)。

 これだけ見てもどれほどの効果を今の禁止薬物がリーグ全体に蔓延していたがわかるし、それだけ効果があるなら、今の年俸の事も考えて、手を出す人間が出てきてしまうのかもしれません。マイナーでくすぶってただけが、MLBでオールスター級になってFAすれば、生涯年俸何倍だという話ですし。こういう辺りの効果があるのかなぁと確証はないまでも思う次第です。

 ただ、このステロイド時代が終わり、次に2010年あたりの投手の時代が始まり、三振の価値が見直されて増えてきた対策としても今度はフライボールレボリューションが起こる。こういうのは見ていて本当に楽しいし、あとから追認しても面白いですね。

(まとめ)

 とりとめない話しかしてないからまとめない。と思ったけど、これだけ。

ステロイド時代の終焉と共にポストステロイド時代/SABRの時代として分析が進み、投手の時代が来た…のかもしれない。

・それに伴ってLDの期待値が下がり、FBの期待値が上がったことから、さらにフライボールレボリューションが現れた…のかもしれない。

・例えば02年03年のような期待されるOPSの差があったら、わざわざフライを狙って打とうとは思わない…かもしれない。

 まぁ確証は無いし、つらつら書き綴っただけなので、本当にとりとめもなく、どうしようもない記事。

 ってことで今日はここまで。

☆本日のおまけ その1

 広島の丸が、WARで評価高いみたいな記事みかけました。まぁ彼はセンターを上手に守れるJoey Vottoなのでしょうがないです(笑)多分キャップをコッソリ入れ替えて使っても気づかれないよ。

☆本日のおまけ その2

 外国人枠撤廃についてHOUの打撃コーチ、アロンゾ・パウエルが言及した点について。

 私は賛成ですけどね。一つは勝利という目的のために、効率的でドライな方法がより多く持ち込まれると考えられる点。勝利を目指すためには何が効率的なのかというのをより考えるようになり、金銭面でのよりシビアな評価がなされるようになるでしょう。高級な外国人選手が増えるので。

 もう一つは日本という世界でもトップクラスの野球先進国が、野球マイナー国を引っ張るチャンスを加速させる点。例えばイランとかパキスタンとかあるいは東欧、アフリカ、中南米諸国のようなマイナーな国から有望な選手が出た場合、日本でプレーするチャンスがより広く与えられます。育成のための外国人選手という広島のような手法が広がります。

 最後に、やはりMLBに対抗するためにも、例えば各チームの戦力均衡や、選手の世界を股にかけた流動性の高まりが発生するため、現状のなぁなぁな、とにかく空気の読みあいとなっているシステムがより洗練され、野球が面白くなる可能性を秘めていると感じる点。

 これだけがパッと思い浮かぶ以上、私は外国人枠はさっさと撤廃してもらっても良いと思うのです。

☆本日のおまけ その3

 フライボールレボリューションを究極まで突き詰めるとこうなっちゃうんじゃね?という遊びの結果(昔やった自分の記事だが)。

H2不動の捕手 野田敦を科学する

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/seriseri/article/165

【連載】フライボールレボリューションの損益分岐 ~価値の高いフライ~

 本記事は連載の中の1記事です。記事単体で読んでもわかるようにしてありますが、連載を通して読みたい方は、下記リンク先の目次から読んでいただければと思います。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/seriseri/article/283

(目的)

 現在流行中のフライボールレボリューション。基本的には大きなフライを打つことが良いこととされており、ゴロを打たない方が良いとされている。一方で、BABIPは依然としてGBの方がFBよりも高い。それでもなおFBの方が(本塁打を含めた)見返りが大きいことから、フライの方が良いという話につながっている。その中で、必ず障害となって表れるのがライナー性の当たりである。せっかくいい当たりを打ったにも関わらずライナーだと単打にしかならない、ちょっと芯を外した大きなフライの方が本塁打になる確率もあり、より美味しいという話さえもある。

 とはいえ、LDのBABIPは7割弱というとびぬけた数字である一方、FBでは13%程度にしかならない。その大幅な差を埋められるほど、FBに長打の可能性があり、LDには無いのかを調べる。

(方法)

 まずは2016年のFB、GB及びLDについての三点セット、Ave/OBP/SLGに加え、OPSを調べることで、実際の状況として、FBがLDに対してどれほどの価値かを調べる。

 続いて、この中のFBの打球のうち、HR/FBをいじることによって、どれだけのHR/FBを残せば、FBがLDを上回ることができるかを調べる。

 最後に2016年の打者の成績を調べ、得られたデータと比較する。

 なお、結果と考察は各項目について逐一行いながら進めていく。

(結果1)

GB .239/.239/.258 OPS.498

FB .241/.235/.715 OPS.950

LD .689/.679/.886 OPS1.565

※なお、Batted Ballの結果が残る02年以降の数字でこの傾向自体は変わらなかった。

(考察1)

 結果で出てきたように、GBはまず問題外として、LDとFBでは残したOPSに大きな開きがあった。LDは打率の高さが圧倒的であり、その結果としての出塁率の差も大きく出ている。一方で、FBはIsoの高さが光る。LDのIsoが.201であったのに対して、FBのIsoは.474である。LDがどうしても長打になりにくい一方、FBは打率が悪くても、それが長打になりやすいことがわかる。

 しかしながら、それでもリーグの傾向としてはLDの方がまだ高い長打率を残しており、FBよりもLDの方が得点に対してより価値が高いと言える。少なくとも、残せるBABIPがLDがFBに対して圧倒しており(これについては打者の力よりは守備力によりアウトセーフが決まってしまい、打者の実力は大きく影響できない)、これが大きな差となってしまっている。逆に本塁打についてはFBが圧倒しているものの、まだLDに届かないレベルであると言える。ただし、これはリーグ平均でしかない。HR/FBは打者によって大きく基準値が違い、パワーのある打者であれば、これを覆せるのかもしれない。リーグで平均的な打者ではまだまだLDの方が価値があると言えてしまう。

 なお、余談であるが、FBのBABIPは.127、一方でGBのBABIPは.239である。しかし打率はFBが.241、GBが.239とFBの方が高くなっている。これはMLBの平均的なパワーの持ち主では、本塁打分が加算されるため、ゴロを打つことよりもフライを打つ方が打率は高くなるのである。が、僅差であるので、犠牲フライを考慮に入れただけで、出塁率は再度ひっくりかえってしまう。

(結果2)

□01

 単純に本塁打以外の安打に対するBABIP、シングル、ダブル、トリプルの割合を固定し、HR/FBだけをいじって0%~40%まで0.01%刻みで試した。縦軸が想定されるOPS、横軸がHR/FBである。

(考察2)

 変数が1つ(HR/FBのみ)の単純な式ですので、面白くないですけれども単純な一直線の式になる。ちなみに相関係数は脅威の1.000(当たり前)、近似曲線の式はy=0.000473x+0.3551である(ただしHR/FBは割合で計算)。HR/FB0.01%はOPSを0.000473変動させる。

 この結果を受け、FBのOPSがLDのOPSのリーグ平均である1.565を超えるのはHR/FBが25.57~25.59%の辺りとなる。このことから、HR/FBをここまで上げることができる打者であれば、十分にLDとFBで得点に関する価値で渡り合える可能性がある。もちろんもっと上げればLDよりもFBが価値が上がる可能性が高い。逆に言うと、ここまでのパワーを得られない場合、まだまだLDを打つ方が可能性があるとも考えられる(最もLD打つ難易度もあるが…)。

(結果3)

□02

 唐突ではあるが、この散布図を示す。これは2016年の規定打席以上の打者のFBにおける安打のうち、二塁打三塁打の合計(グラウンド内の長打)の割合である。相関係数は-0.690となっており、それなりに強い負の相関が得られた。

□03

 これを上の想定される2B、3Bに代入し、わずかではあるが、精度を高めた。結果的に変数が増えたので、非常に緩やかではあるが曲線を描いた。

(考察3)

 割と大きなトピックとなる可能性を持つものを軽くぶち込んだが、FBの安打のうち、2B+3Bの割合はHR/FBが上がれば下がる。それもなんとなくではなく、ほぼ明確な意思を持った相関係数が出る。HR/FBが高いと大きく強いFBが多いから、必然的に二塁打三塁打が増える…のではなくむしろ減っていく。これをもう一つの変数として代入したところ、少しだけ結果が変化した。

 この場合、LDの平均的なOPSであった1.565をクリアするためには大体25.98~26.01%のHR/FBが必要になる。非常にわずかな差ではあるが、明確な差が発生した。

 なお、このグラフは上に突であり、例えばHR/FBが20%付近まではHR/FBが上がった方がOPSが延びやすいが、それ以降の伸びは鈍化する。HRが増えることよりも2B3Bが減る方が大きな影響が出ているのである。

(結果4)

□04

 上の結果を受け、2016年のMLB規定打席以上の打者のHR/FB、上位30名を表示する。

□05

 また、(LDのOPS)-(FBのOPS) と (HR/FB)の相関を確認した。

□06

 併せて、LDのOPS(縦軸)とFBのOPS(横軸)を散布図にした。

(考察5)

 先述したHR/FB25%~26%というのは非常に高いハードルである。昨年25%を超える打者はBraun、Khris Davis、Cruz、Chris Davis、Tomasの5名のみであった。彼らほどのパワーと技術を備えればLDを打つよりもFBを打った方が良い可能性がある。また、難易度は非常に高い一方で、決して不可能な壁とも言えず、ここでの結論としては「非常に高いパワーを備えた打者であれば」FBを意識して打った方がLDよりもなお、OPSが高くなりうるということになるだろう。

 また、5番目の図で示した通り、基本的にはHR/FBが上がればFBのOPSが上がるため、ここが上がると、LDのOPSとの差は縮まる(図の右上にシフトする)。この時の相関係数が0.789とそこそこ強い(ただしかなり恣意的に作った点があるので、直接的な相関ではない可能性が高い)。なお、昨年唯一LDのOPSよりもFBのOPSが高かった打者はJoey Vottoである(さすがデータ系のネタの宝庫だ)。彼のHR/FBはMLB10位の22.0%であり、やはりパワーがある打者であればあるほど、FBの価値が高まり、場合によってはLDを凌駕する可能性を秘めていることがわかる。

 逆に最もLDのOPSとFBのOPSの差が大きかった打者はEnder Inciarteで、その差は実に-1.147、彼のHR/FBはリーグワースト2位の2.5%でしかなかった。彼のような非力な打者に関してはむしろLDを打った方が得点により大きく寄与することができるだろう。

 なお、6番目の図を見ればわかる通り、LDのOPSとFBのOPSには明確な相関は無く(相関係数0.375:非常に弱い相関といえるか?)、また、FBのOPSが幅広く散っている(左右に広い散布)一方で、LDのOPSは固まっている(縦方向の散布が小さい)。これはLDよりもFBの方が、より個々人の能力を強く示す打球傾向と言えるだろう。

 そのため、価値の非常に高い打者というのは「FBのOPSがLDのOPSを凌駕するほどのパワーを発揮できる打者」と考えられ、逆に「非力な打者はひたすらLDを打つことで、一定以上のパワーヒッターと渡り合える可能性も示す」ことにもなるだろう。

(まとめ)

・基本的にLDの方がOPSが高い。平均的な打者であればLDを打つことを心掛けた方が得点への寄与は大きいと考えられる。

・でもGBは問題外。

・リーグでも有数のパワーヒッター、特にHR/FBが25%に迫る打者に関して言えば、FBのOPSがLDのOPSを上回る可能性がある。

・つまり、パワーヒッターであればFBを打った方がLDを打つよりも得点への寄与が大きい可能性がある。

・特に強くパワーを発揮できる打者は非常に価値が高くなるだろう。

広島東洋カープは運に恵まれているのか

(目的/動機)

 昨年、広島は非常に運に恵まれていた、だから優勝できた、みたいな論調をたびたび目にしました。そして、今年もここまでは運に恵まれている、だから上位にいるみたいなことも聞きました。本当にそれだけなのか、確認していきたいと思いました。ちゃんとした体裁をとっているけど、割と小ネタなつもり。

(方法)

 私大好きBABIPと得失点を中心にして、セントラル・リーグ各チームの状況を確認したうえで、それを中心に論じていきましょう。議題の中心は、「広島がラッキーなのか」「広島はラッキーな「だけ」なのか」です。

 なお、データはすべてプロ野球ヌルデータ置き場さんから引用しました。いつもながらありがとうございます。

(結果① 2016年)

□01

 順番は単純に差の順(BABIP-被BABIP)にしました。昨年の結果はBABIPで広島がリーグ1位、被BABIPでもリーグ1位、断トツの+0.028の差を叩き出し、得失点も断トツの+187という記録でした。

□02

 なお、縦軸に得失点、横軸に差を取ってみるとこのように綺麗なグラフに。相関係数は0.84程ありますから、かなり高い相関があると言えます。

(考察① 2016年)

 まず、最初に考えないといけないのはBABIPが果たして運で100%語っても構わないのか、という点です。少なくともこれについては否です。詳細については下記URLから飛んでください。以前私がMLBを対象にしてBABIPについて頑張ってみた時の一連の記事です。

(「【連載 第0回】打者の運と実力を探る イントロダクション」http://www.plus-blog.sportsnavi.com/seriseri/article/194)

 基本的にはBABIPは打者の実力がそれなりにかかわるものの、それを無視してしまいかねないほど大きくブレる(=そのブレを解析できないもの=運と呼ぶ)指標でもあるということがわかりました。特にその実力については各打者あるいは投手の打球傾向には大きく左右されます。良い当たりはヒットになりやすいですし、当然ゴロやフライよりもライナー性の当たりがヒットになりやすいですから、そういう当たりが打てる打者はBABIPがよくなりやすく、ライナーを打たれにくい投手はBABIPがよくなりやすいです。そしてそれを吹っ飛ばすくらい運も関係してくるのです。

 その中で、昨年の広島を見てみると、他チームに大きく水をあける+0.028もの幸運な差を発生させ、それと高い相関を見せた得失点でも断トツの数字を示し、そして優勝しました。ついでに得失点と勝率の相関の高さも調べたらわかりますが、野球の場合は面白い結果が出ます。

 もちろん、これについて広島の各選手の実力が非常に高かったという可能性は否定できませんが、それでも広島がある程度以上の運に恵まれていたのではないかと思います。

(結果② 2017年)

□03

 今年も確かに広島はBABIPでも被BABIPでもリーグ首位であり、その差も唯一大幅なプラスを記録している。得失点も92と高い。他チームを見ると、阪神が大幅なマイナスを記録しながらも得失点は大きくプラスである。逆に中日は-0.001とわずかにマイナスなBABIPの差であるが、得失点は-53とリーグで2番目にマイナスを記録している。

(考察② 2017年)

 今年も広島はある程度以上の幸運に恵まれているようにも見えますね。少なくとも不運だということは全くできないと考えます。チーム単位で見ますと相当な幸運にも恵まれているのかなぁというのが感想ですが、そんなんじゃここの読者は納得してくれないと思いますので、こういうのを出してみます。

□04

 まずは打者の方です。OPSは広島が段違いの数字を出していますね。他チームより1割高いです。ちなみにそれ以外は4チーム団子。巨人が酷い数字で沈んでいます。もちろんこれをBABIPに押し付けてしまっても構わないのですが、別な視点でも見ていきます。まずは四球と三振の割合を示すBB/K。これについては選球眼の良さにも掛かってきますし、BABIPに頼らずにアウトにならない力も示します。

 が、BB/Kは0.47でリーグ3位。確かにリーグ上位にはいますが、段違いで首位という感じではありませんね。つまり広島は選球眼が良く、良い球だけを選んでそれをぶっ叩くという戦術に長けている訳ではなさそうです。

 次にAB/HRを見ましょう。とりあえずパワーナンバーの指標として連れてきてみました。これは1本塁打当たりに要する打席数です。こちらは広島が段違いの数字を叩き出して、リーグ1位です。続くのがLuck最下位だけど得失点プラスの阪神とBABIPの差が小さいけれども得失点は大きくマイナスの中日というのが面白いですね。

 要するにどちらかというと現状の広島については、打撃の方は、リーグでもトップクラスのパワーを持っていて、そのパワーで高いBABIPを残せる可能性が高いでしょう。強く叩いた打球が多いのでベースのBABIPが上がりやすい、ついでに本塁打も増えやすいということですね。まぁ右打ちだの進塁打だの小技だの言わない方がいいってことですよ

 とはいえ、不運ということはできなく、おそらく運についてもややプラスな数字は出ていると思います。

□05

 もちろん投手陣の方も確認しましょう。広島はやっぱりリーグ1位のOPSですね。羨ましい。つーか投手の被OPSが1位で打者のOPSがぶっちぎりの1位だったら弱いはずがないのだ(byジャラ〇ンガ)。

 ついでにOPS2位は阪神ですね。それ以外の4チームは団子ですが、巨人はここでも最下位。そりゃあ簡単には勝てませんね。

 投手の実力を最も端的に表す指標でもあるK/BBを確認すると実は広島はリーグ最下位の数字なんですね。その数字わずかに1.88です。ちなみに数字示してないですが、奪三振よりも与四球が多すぎる(リーグワースト)が問題ですね、これ。

 次に出したランナーを返さない度LOB%はリーグで真ん中くらい。これについては普通の感じなので特筆すべきことはありません。

 そしてFIPは色々絡むのですが、リーグ2位、FIPとERAの差もリーグ2位です。要するにいい感じに実力以上に防御率が良く出ているとも言えます。これは別に直接BABIPには関係しませんが。

 投手陣については、割とかなり運が良く出ているように見えますね。実力がずば抜けてる感じがしません。

(まとめ)

 じゃあまとめてみましょう。

・今年も広島は素晴らしいBABIPの差と得失点を記録している。

・打撃についてはリーグトップのBABIPでトップのOPS

・打撃はパワーナンバーもずば抜けて1位。パワーで高いBABIPを残している可能性。

・投手陣も今年もリーグトップのBABIPとトップのOPS

・ただし、K/BBはワーストでF-Eも高め。こちらは運が味方したように見える。

 結論:打撃は良い。不運でもない。投手陣はかなり怪しいが、運が良い。なので全体としても運が良い方ではありそう。とはいえ、運だけではない。

 というところで今日はここまで。

☆本日のおまけ その1

 Twitterには載せましたがCLのAB/HRランキング

広島 35.54

阪神 46.49

中日 47.56

横浜 52.82

巨人 60.91

東京 63.90

…打者有利の本拠地球場とはいったい何なのでしょう(笑)

☆本日のおまけ その2

 なんか例のボールにモンスター入れるゲーム。マイナーチェンジ版は楽しみですね。たぶん買います。…早くツリーでシングル50連勝しないと…(割とマイナー使いなので…)。

☆本日のおまけ その3

 その上のゲームのGo版。こっちも結構やりこんでる勢なんですよね、私。お金は払ってませんが。そして周りが青くて、孤立無援(徒歩5分以内のジムがすべて青のLv.10で月単位で安定しているし、崩しても48時間以内に元に戻る)すぎるのが難点ですが。。。つーかそれよりも強制的にCPゲーにしてしまったハピットモンスターである。アレにフェアリーと高い攻撃力を与えなかったのが本家の良心だったのに。黄色いムーミンは高CPでもちゃんとフェアリーや氷でCP差1,000超くらいでも十分対策できたのに、今のハッピーなすびはそれだと制限時間までに倒しきれないでTODされるし、ゲージ技食らうのでダメージが大きくて…。メタゲームとしての体をなさなくなるとちょっとねぇという感じです。