Rayを釣りたくて III

フロリダ沖に降り注ぐ栄光の光の中で舞い踊るトビエイを釣り上げる事を望むブログ。スポーツナビ+閉鎖に伴ってIIIとなって引っ越しました。旧記事で画像がほしい記事があればコメントいただければ、気づき次第対応します。

PAPの議論のおまけ

 前回の記事(リンクのおまけ記事です。

 まずは前説。これは前回からそのまま持ってきました。

 先日、広尾晃さんのブログ「野球の記録で話したい」においてPAP(投手酷使点:Pitcher Abuse Point)についての記事をアップしておられた。それについて個人的に調べてみたいと思った点がいくつかあったので、珍しく(?)NPBに照準を絞ってPAPと翌年の登板について調べてみました。

 広尾氏の当該記事は以下のとおり

藤浪晋太郎は“危険水域”|2015NPB 

・パには赤信号の投手はなし|2015NPB

MLB投手のPAPはこの程度である

 PAPと言うのは先発投手の酷使度を表す指標で、MLBでは一時期盛んに使われた物です(最近下火な気がする)。計算式は非常に単純で以下のとおり。

PAP=(1試合の投球数-100)^3 ※ただし100球未満は一律0ポイント

 これの累積ポイントが投手がどれほど酷使されているかを示すとされています。本来的には翌年の防御率との相関を観るためのものではありましたが、故障率との高い相関も指摘されています。また、基本的にはMLBで中四日で、100球を目途として、年間30-34登板位をすることを前提として考えられたものですので、そのまま中六日のNPBに持ち込むことへの批判もあります。ざっくり10万ポイントを超えると警告ライン、20万ポイントでいつ壊れてもおかしくないレベル、とされています。

 さて、前回の記事ではPAPと翌年の成績は特段の相関は無いものの、そもそもローテーションに入って一年間投げるだけで翌年の成績は悪化しがちである、としました。その中で気づいたのが、やたらと外国人投手はPAPが低いのです。例えば2012年のウルフは1,585ポイント、2013年のバリントンで5,023ポイントです。MLBでは上位30人くらいは20,000ポイントを越えてきますから、それと比べてもさらに低いものとなっています。では実際にどんな数字か観てみましょう。

 まずは外国人投手から

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 平均で2,615球、PAP87,150でした。これを616,258と日本人投手まで含めても最大の数字を記録した2013年のメッセンジャーを省いてみると、平均2,576球、PAP56,026ポイント、さらにメッセンジャー3年分を取り除くと2,546球、48,964ポイントまで下がってきます。メッセンジャーは気が済むまで投げさせてほしいと自らコーチ陣に直訴し、受け入れられているようですから別枠ですが、それ以外の投手はかなり酷使されていないことが分かります。基準となるPAP100,000ポイントオーバーは延べ18名中わずかに5名、150,000ポイントだと2名でしかもいずれもメッセンジャー。200,000ポイントは2013年のメッセンジャー1名でしかないのです。

 続いて残り77名の日本人投手を見てみます。

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 こちらは平均2,698球、PAP154,681を記録しています。同様にPAP100,000超は77名中50名、150,000超が33名、いつ壊れてもおかしくないとされる200,000ポイント超は18名もいるのです。

 これをまとめてみるとこんな感じです。

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 否定できないレベルの差があることが分かりますでしょうか。つまり極端に言うと外国人投手にとっては素晴らしくホワイトな職場であるのに、日本人投手にとってはブラック企業だと言えるのです。

 この理由はわかりません。と言うよりも様々な理由があるでしょう。外国人枠の関係から、「成績が悪かったら使わない」ためそもそもローテーション入りする外国人は実力が高い可能性もあります(が、平均先発数はむしろ外国人の方が多くなっている)。あるいは外国人投手はきちんと酷使しないように伝えているのかもしれません。逆に日本人が、監督やコーチから行けるか?と聞かれて、Noとは言えないだけなのかもしれません。はたまた、外国人は100球しか投げられないからと変に気をまわして、すぐに交代してくれているのかもしれません。ちなみに平均的な先発数はむしろ外国人の方が多いのに、日本人の方が平均投球回数は2イニング程増えているので、外国人の方をさっさと降板させるというのはある程度は信憑性がありそうです。が、外国人には気を使えるのに日本人は酷使して良いというのはこれまたおかしな話です。むしろ短期間しか使えない外国人投手の方を酷使すべきでしょう。3年間くらい馬車馬のように働かせて、契約終了後巨人に行った時には使い物にならない方が各球団としては美味しいはずです(笑)

 ここらへんに妙なダブルスタンダードがあるような気がしてなりませんし、日本人投手は妙に投げすぎだなぁと感じる次第です。MLBにかぶれていると言われればそうですけれども、事実ローテーションで投げた翌年はかなりの確率で防御率も投球回数も下がる事実を見逃してはいけないのだと思います。MLBでもこれ、やってみます?大変なのであまりやりたくないですけど(笑)